2024.06.10
先日、東京都新宿区の初台にある東京オペラシティアートギャラリーで開催している「宇野亜喜良展」に行ってきました。図録が売り切れとなっていて、予約注文をしたので、そのうち図録は郵送されてくると思いますが、その時に改めて作者や作品の背景について探っていきたいと思います。ともかく現在90歳になる宇野亜喜良氏の10代の習作デッサンから展示されていた本展は、その圧倒的な作品数で、見応えは充分ありました。私が学生時代から第一線で活躍されている宇野氏の画風は一貫していて、少女の風貌に特徴があり、眉を剃り落とした顔は無表情でありながら、強烈なインパクトをもっていました。また華奢な肢体からは頽廃的なムードが漂っていました。先日放映されたNHK日曜美術館で美術家横尾忠則氏と対談していて、横尾氏が宇野氏のことを90歳まで少女を描いているのはヘンタイだろうと言っていましたが、これは明らかに褒めの言葉です。常軌を逸した表現まで追求すれば、作者はヘンタイやヲタクと呼ばれて、創作活動の名誉であると私は考えるからです。900点を超える作品の中で、私が気に留めたのは何と言っても鉛筆によるデッサンで、ここで考え抜かれた雛型が、やがてポスターや絵本等になっていく過程を知りました。少女とともに馬の絵もよく登場してきて、巧みに空間に配置されたそれらのものが美意識を醸していました。これはグラフィック・デザインの仕事で、見る側の眼を瞬時にキャッチする効果があるのです。イラストレーションもグラフィック・デザインも消耗されていく美術作品なので、時代を反映し、また風俗に敏感になる傾向があります。そこが絵画と違うところですが、私は宇野ワールドを見て、若かった頃にアングラ劇に夢中になった時代を思い出したのはそんな要因があったのかもしれません。図録が送られてきたら、もう一度NOTE(ブログ)に書いていこうと思います。