Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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郵送されてきた「宇野亜喜良展」図録
東京での展覧会は先日終って、次は愛知県の刈谷美術館へ巡回する「宇野亜喜良展」ですが、ギャラリーショップで予約した図録が自宅に郵送されてきました。長い創作生活を物語る立派な図録で、宇野亜喜良氏の多様な分野での活躍が見て取れます。とりわけ描かれた痩せ細った女性たちの、その妖艶な瞳はどこに向けられているのか、線描が魅惑的な作品が数多くありました。図録の文章からまずイラストレーターとしての出発点を探ってみたいと思います。「15歳の宇野が描いた《自画像》は今回の展覧会のなかで最も古い時期の作品だが、高校1年生にしてすでに十分な画力を備えていたことをうかがわせる。現在にいたるまで多彩なイラストレーションを生みだす根底には、少年時代に培った基礎的な画力があったといえるだろう。」次に少女を描いた初期の頃を扱った文章です。「装幀や挿絵を数多く手がけ、1冊目となる『寺山修司抒情シリーズ』の『ひとりぼっちのあなたに』(1965年)から『少女』という存在を意識的にとらえるようになる。すらりとした肢体の少女たちは、つぶらなまなざしをもち独特でアンニュイな雰囲気を漂わせている。」そして仕事に対する姿勢が書かれていました。「仕事の依頼から造形が始まるという宇野亜喜良。なんでも描ける画力がありながらも画家ではなく、イラストレーターとしての発注が来てから自己に内在するものを明らかにしていくスタンスを貫いている。50年代から活躍し始め、移り変わる時代のなかで制作を続けてきた宇野は、『今のイラストレーションには、何か強烈に時代をひきずる思想とか風俗がないですね。社会現象化してないってことなんでしょう。逆説的な言い方になるけれど、だから現代という時代は面白い、何でもありの時代』と述べており、このような時代のとらえ方であるがゆえに、宇野の制作姿勢は揺るぎない。~略~宇野は70年を超える創作活動を通じて、表現の引き出しを増やしながら、平面に留まらず、立体を含めたイラストレーションを、インパクトのあるビジュアルに転換(ポスター)し、連続した動画(アニメーション)にし、空間的に展開(演劇)し、観客との相互関係(展覧会)を築き、そして、他者とのコラボレーションにより思わぬ方向へと作品を高次化させてきた。」(引用は全て松本育子著)宇野氏は時代の語り部でありながら、時代を牽引した寵児でもあったと私は思っています。