Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「抽象芸術」を読み始める
私が読みたいと思う書籍は、新刊本の書店にはなく、美術館のギャラリーショップか、古本市で掘り出し物を見つけるしかないと思っています。私の趣向は時代遅れなのかもしれず、それでも自分自身の創作活動の思索を裏付ける書籍を探しているのです。本書「抽象芸術」(マルセル・ブリヨン著 瀧口修造・大岡信・東野芳明 訳 紀伊國屋書店)は横浜駅近くの古本市で見つけました。1959年初刊なので、私が3歳の時に発刊された書籍です。紙も変質し黄ばんだ書籍を手に取った時に、「抽象芸術」の概念を一から考え直してみようと私は改めて思いました。「『抽象芸術』という言葉は、たとえば『バロック芸術』という言葉が虚辞的であるのとまったく同様に虚辞的な表現だということを認める必要がある。これは、ただ言葉が必要だからという理由で、非常にさまざまな意味をもつ作品群につけられたレッテルなのである。『抽象的』という言葉と、(表面的には)その反対である『具体的』という言葉との語義のせんさくを始めようとすれば、はてしない議論にまきこまれることは必至である。~略~抽象という現象は芸術の創造過程のうちにあり、人間精神の恒常性に属するものである。これはあまりにも明白なことだから、美術館の各部屋をぶらつくだけではっきりわかるだろう。創造衝動の二つの根づよい傾向、つまり、発明と再生産との二つの傾向がそこに示されており、そのうちのどちらかが支配的であるにしたがって、ある時代、ある国の芸術は具象に傾き、あるいは非具象に傾くのである。」こんな文章が数頁を捲ってみると掲載されていて、私自身改めて考え直そうとしている「抽象芸術」の概念に、本書は微に入り細に入り応えてくれそうだと思いました。本書をじっくり腰を据えて読んでいきたいと思います。