2024.09.05
今日は工房の作業を休んで、家内と東京六本木にある国立新美術館で開催されている2つの展覧会を見て回りました。一つ目の展覧会は二科展で、私の工房を使って木彫を制作している後輩が出品しています。彼は二科会の会員になっていて、招待状をいただきました。二科展は大規模な公募団体で、見応えのある作品も少なくありません。後輩の長谷川聡さんは、デビューからずっと木彫をやっていて、以前には寄木造りで大きな作品をやっていましたが、今回は一木造りです。とは言っても大木を彫っているので、表現としては遜色がありません。一木造りは、大陸から仏教伝来に伴って、飛鳥時代から平安時代初期まで、この技法は仏像制作の本流でした。こうした木彫の長い伝統技法を踏まえて、現在でも同じように彼は木材を鑿で彫っていく方法を採っているのです。しかし、モチーフは現代を象徴するような非対象で、ボリューム同士を繋ぐ構造体が、彼の作品の見せ場だと思います。ボリューム各部分と相互の均衡でいかに緊張状態を作るのかが彼の求めている理想形で、それが作品成功の基準になるのだろうと私は考えています。モチーフが非対象であるならば、作品に空洞を作るのも自由で、寧ろ構造体を際立たせるために、彼は大小の穴を穿っているのです。構造体が簡潔であればあるほど、今後はどのように展開していくのか、現代彫刻が陥りやすい定番化をどうしていくかが課題です。ジャン・アルプのように形態に先んじてコトバ(思索)を探るか、デビット・ナッシュのように木材に手を加えずに主張を語らせるか、さまざまな方法論を探りながら、今後の展開を期待したいところです。さて、二つ目の展覧会は二科展の隣りで開催していた「田名網敬一 記憶の冒険」展に行ってきました。グラフィックアーティスト田名網敬一は、この回顧展開催後すぐに他界したそうで、享年88歳だったようです。若い頃から第一線で活躍していたので、そのサイケデリックな世界を私も学生時代から知っていました。しかも彼は母校の先輩で、「反芸術」を謳ったグループと行動していたようで、ダダイズムが元気だった時代に青春を送っていたことも分かりました。詳しい感想は後日改めます。今日は充実した一日を過ごしました。