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「抽象絵画の主流 」について➂
「抽象芸術」(マルセル・ブリヨン著 瀧口修造・大岡信・東野芳明 訳 紀伊國屋書店)の「Ⅴ 抽象絵画の主流 」は長い論文になるので、NOTE(ブログ)には分割して、留意した文章をピックアップしていきます。本章には抽象絵画の先駆者たちが登場し、ひとり一人の世界観を論述しています。私自身が浅学のために知らない抽象画家が多いのですが、その都度調べてから文章を引用しています。今回はシュネーデル、スーラージュ、アルトゥングの3人の画家を取り上げます。まずシュネーデル。「詩人と同じように、画家にとっても、他人に伝えることができるのは、語られる可能性のあるものだけである。シュネーデルの浪漫的な情熱や根源的な不安や、またともに創造につながる苦悩と喜びとの入りまじった混淆の激流は、生気に満ち、劇的で、精神を高める、美と力の豊満へと、絢爛たる様子で、ひろがっていく。浪漫派と同じく、シュネーデルは原始の自然の大きな秘密のいくつかを、またたえざる運動によって動いている、根源的なエネルギーのいくつかをとらえ、屈服させたのである。」次にスーラージュ。「かれには、鋭く堅固な描線の本能と、この描線そのものにもっとも有効な表現要素を見いだすドラマティックな性格とのあいだに、一致が認められるが、黒と茶を地味に調和させ、悲劇的な運命がその大きな飛翔の跡をとどめた情熱的な建築を建てるスーラージュの才能の本質をなすものは、とりわけ、この一致である。特にかれのデッサンでは、感動が、記号や象徴にまで達することがある。これは寓意的、あるいはまたアルファベット的な単純化によるのではなく、この記号が、中国やアラビアの書と同じく、感動の状態に化した事物の形態そのものだったからである。それは、具象ではなく、情感の発露したものなのだ。」最後にアルトゥング。「『えらばれた芸術家というものは、根源的な力がすべての生成現象に養分を与えている、あの秘められた場所の領域までつき進んでゆくもののことだ』とパウル・クレーが言っている。アルトゥングはそういう芸術家のひとりなのである。《秘められた場所》とは、まだ噴火する勢いを秘め、重い物質をふきとばして、純粋な激情になっている岩や溶岩の不気味に厚い地層をくぐり、濾過されてきた、未知の原動力から噴き出した奔流が、ぶつかり合い、せめぎ合っている場所のことである。この濾過によってはじめて、かれの内部で煮えたぎり、混乱した表現主義的なドラマが、ギリシャ悲劇に似た簡潔な、しかも胸に迫るなにものかに変形されるのだ。」今回はここまでにします。