Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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新作陶彫の焼成第一歩
私が長年作っている陶彫作品の面白さは、制作工程の最終に控えている重要な工程である焼成、つまり窯入れにあります。これは面白味がある反面、大変やっかいな工程で、窯に作品を入れてしまえば手が出せない状況があるからです。他の素材であるならば、作品の最終仕上げに至るまで手中で完成させることが出来ます。陶彫の仕上げは窯内の炎神に任せることしか出来ません。それがやっかいでもあり、面白くもあるのです。陶彫は最後の最後に手仕事と距離をおく工程があり、窯から出てきた作品は、自分が作ったとは思えない風貌で、私の目の前に姿を現わすのです。以前、NOTE(ブログ)にこの陶彫の風貌に対して鎧を纏った姿と例えました。私にとっての面白味はここにあります。逆にやっかいなことは、高温で焚くために陶土が石化し、罅割れなどの破損が生じることにあります。これを防ぐために成形の段階から厚みを一定にしたり、カタチの内側を空洞にしたり、穴を開けるにも乾燥で陶土の表面が引っ張られることがないように穴の位置を考えたりしています。轆轤で挽く陶芸に比べると、陶彫は焼成には無理なカタチをしていて、乾燥によって表面が上下左右に引っ張られ、罅割れが頻繁に起こり易いのです。それを最小限にするのが長年のテクニックですが、私は何年もやっているくせに初歩的な失敗があります。とりわけ、新作の成形と彫り込み加飾が終わり、乾燥が進んで仕上げや化粧掛けを施し、さて、これから窯入れをする段階になると、新作は本当に大丈夫だろうかと、私は自分を疑いたくなります。陶彫はカタチを優先するため、割れにくくする技能は二の次なのです。新作の形態に慣れてしまえば、複数作る集合彫刻ならなおのこと、事前に予防を施すことは難しいことではありません。だからこそ新作の最初の作品の窯入れに緊張が走ります。今日はその日でした。明日は窯で焼成中のために工房内の電気は使えません。家内と美術館にでも行こうかと話しているところです。