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映画「侍タイムスリッパー」雑感
昨日、陶彫作品の窯入れをしました。今日は工房での作業が出来なくなったことを言い訳にして、家内と映画に行ってきました。観てきたのは「侍タイムスリッパー」。ネットで評判を知って観に行ったのですが、平日にも関わらず混んでいました。観客は高齢者が多い印象を受けましたが、平日で映画館に来られるのは私も含めた高齢者なのだろうと思います。本作は低予算にも関わらず時代劇への愛に溢れた秀作に仕上がっていました。低予算と言えば上田慎一郎監督の「カメラを止めるな!」の記憶が甦り、その面白さを彷彿とさせるものがありましたが、こちらは時代劇で演技の達者な役者を揃えていて、丁々発止の殺陣もあり、発想のユニークさもさることながら本格的な時代劇になっていました。折しも海外で「SHOGUN 将軍」がエミー賞を受賞したこともあり、侍が登場する物語は、現代風の多様な発想のもとで今後ますます新たに作られていくのではないかと期待しています。本作も幕末の京都で落雷に打たれて、現代にタイムスリップした会津藩士が、時代劇撮影場所に降臨し、周囲の人々とちぐはぐなやり取りをしながら、それを徐々に理解し、時代劇の斬られ役として活躍する物語でした。彼は役者ではなく本物の武士なのですが、そんなことは現代人にはわかるはずもなく、演技とは言えない真摯な立ち振る舞いに周囲を驚かすことも多々ありました。時代劇のストーリーが定番化し、斜陽産業になっていく時代の流れを、安田淳一監督は何とかしたいと思っているらしく、侍の美学が垣間見える脚本に私も監督の並々ならぬ意欲を感じました。私がやっている彫刻表現も同じで、映画監督が映像表現を通して自らの美学や主張を盛り込んで映画を作っているわけで、そこにビジネスとは違った創作的視点があるのではないかと私は考えます。「侍タイムスリッパー」のように発想を転換すれば、まだまだ面白い時代劇が作れそうだと思ったのは私だけではないはずです。