Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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新聞記事より「場・空間との対話」
先日の朝日新聞夕刊に掲載されていた記事に注目しました。「場・空間との対話 増す重要性」という記事で、「もの派」の旗手だった芸術家李禹煥氏のインタビュー記事でした。李禹煥氏は、韓国に生まれ日本を拠点に活躍する芸術家で、現在88歳くらいでしょうか。私にとって印象深い作品は鉄板の上に自然石を置いた「関係項」シリーズです。2005年に横浜美術館でまとまった作品群を見てから、その複数ある著書も手に入れ、場や空間に対して彼がどのような考えを持っているのかを知りました。私自身は作品に従来の彫刻的造形を施してしまうため「もの派」とは言えませんが、「もの派」の考え方は私の中に浸透しています。記事の中で本人が言った内容を引用いたします。「僕の作品は、自分のメッセージとかエゴを表現するのではなく、その場の力や場にある出来事、時間、あるいはもっと大きなものからのぞき見えてくるものをつくるものです。作品はそのための契機であって、作品だけを見せるのではない。そしてそういったことから、日常から非日常へと感覚を開かせていくこと、普段は見えないことや聞こえないことに気づく場を作ることが、僕たちアーティストができることだと思います。」素材に手を加えず、別の素材同士を組み合わせることで、多くの内容を孕んだ世界を創出することが李氏の世界観だと私は思います。「ますます大きな存在になる中で、AIは表現にとって最も重要な三つのこと、すなわち経験、プロセス、時間の全てを奪います。そして、バーチャルな情報では伝わることのない、身体で受け取る情報や現場性といった直接経験の重要性を軽視します。だからこれからのアートは、経験、プロセス、時間を奪わない、人間として体験できることに立ち返った表現を考えることが大切だと思います。展覧会やインスタレーションといったものは、AIが軽視する、現場に立つことや直接出会うということに回帰する場でもある。そういう意味でも情報や言葉を妄信せずに、まずは場や空間にぶつかってみるという経験から出発したもの派の試みは、今の時代、更に重要性を増していると思います。」私もこんなホームページのNOTE(ブログ)を書きながら、場や空間との対話を大切にしている者です。私に浸透した「もの派」の考え方はこんなところにあると感じています。