2024.10.08
今日の朝日新聞の文化欄に、私が嬉しくなるような記事がありました。冒頭の文章を紹介します。「ともに江戸時代中期の京都画壇を代表する絵師、伊藤若冲(1716~1800)と円山応挙(1733~1795)が合作した屏風が新たに見つかった。2人の合作は類例がない。」若冲と応挙の展覧会となれば、私は必ず出かけていき、それぞれ画風の異なる超絶技巧の作品を別の場面で堪能してきました。発見された屏風は専門家の鑑定により真作と判断されたようです。同時代に生きた絵師2人は「平安人物志」(1782年版)のランクでは応挙が1位、若冲が2位とあったようですが、お互いのことをどの程度分かっていたのでしょうか。「自由奔放に描いて現代にブームを引き起こした若冲と、写実を重視して円山派を創始した応挙。京都で同時代を生きた2人だが、直接の交流を示す資料はほとんどない。」実際の屏風についての文章です。「若冲は左隻に竹と鶴を描き、応挙は右隻に梅と鯉を描いた。落款の位置は左右対称で、紙の継ぎ目も左右でつながるという。」若冲研究の第一人者辻惟雄氏がこんな感想を述べています。「『なかなか面白い作品が出てきた。お互いが自立性を確保しながらも、お互いに合わせてもいる』と述べ、『ナンバー2の若冲は負けるものかと描いたのではないか。鶏は羽が踊っていて、若冲の鶏で屈指の作品だ』と興奮気味に話した。」(引用文は全て西田健作著)伊藤若冲と円山応挙とは私にとって絶妙な取り合わせで、江戸時代の絵画の面白さを私に齎せてくれた2大巨匠なのです。勿論、辻惟雄氏が著した「奇想の系譜」があればこそ、こうした絵画の面白さが伝わったのですが、今では西洋絵画の写実や象徴主義にも見劣りのしない我が国の文化的誇りとも言えます。否、彼らの鋭利な線描は西洋の人々をも魅了する画力があると私は考えています。この屏風は是非とも見たいものですが、近々大阪中之島美術館で公開されるそうです。これは将来、関東にも巡回してやってくるのでしょうか。