2024.10.12
週末になりました。今週を振り返ると、木曜日に出かけた出光美術館で開催されていた「物、ものを呼ぶ」展が、今も印象深く心に残っています。ここで改めて日本美術の素晴らしさを味わいました。私が注目したのは絵画の余白部分で、何も描かれていないところに、情景が果てしなく広がる空気感を感じ取りました。それは空虚ではなく、まさに空間と呼べるもので、描かれた対象を豊かに包み込んでいました。空間は書にも通じていて、墨で書かれたところと行間という隙間に、なぜかホッとするような気分を持ったのは、平面である書を空間として立体的に捉えた結果だろうと思っています。そう見ていくと、伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」は日本らしい絵画の常識を破った不思議な作品と言えそうです。小さな正方形を一つずつ丹念に塗り分けてモザイク状にして、そこに鳥獣花木を配置した作品は、絵画というよりデザイン性に富んだ名作と言えます。そんな絵画鑑賞を自らの創作活動の糧にしたい私は、今週も朝から夕方まで工房に籠って制作をしていました。おそらく若冲も、私の陶彫に施す彫り込み加飾と同じように、小さな正方形に対し色彩を微妙に変えつつ、退屈に堪えながら作業を進めていたのでしょう。今週は作業に相応しい気温になって、漸く制作に集中できるようになりました。陶彫制作は地道な作業ばかりですが、彫刻は労働の蓄積と考えている私にとって、これは通常の制作風景です。私は週2回の水泳と夜はRECORD制作、読書、それにこのNOTE(ブログ)の書き込みというルーティンが自分の性に合っているらしく、1週間のうちに鑑賞の機会でもあれば、十分に満足できる1週間になるのです。3年前の二束の草鞋生活を思えば、創作活動一本の今が一番充実していると思っています。