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横浜の「仮面絢爛」展
昨日、東京赤坂のサントリー美術館で「英一蝶」展を見た後で、横浜の馬車道駅まで足を延ばし、神奈川県立歴史博物館で開催している「仮面絢爛」展を見てきました。ちょうど東横線・みなとみらい線一本で東京から移動できたので、都合が良かったのですが、古代から伝わる仮面に、私は昔から興味を持っていました。本展は美術的な鑑賞というより、武家に伝承されてきた仮面をその背景とともに提示しているもので、学術的要素が強いように思いました。図録に望月館長の挨拶文がありました。「本展では、神奈川、鎌倉と深く関わる仮面や、中世の武士たちが邂逅し、親しんだ仮面の数々を集めることで、単に造形や機能だけではなく、仮面の背後にある地域に息づく豊饒な音楽文化の存在を発見し、またその文化を利用しながら地域を支配しようとした領主たる武士たちの姿を捉えたい…」とある通り、現存する仮面に舞楽面と菩薩面があり、当時の音楽や舞いとともに仮面はさまざまな儀式に使われていた空気感を纏っていました。これは実際の古典芸能を見てみないと分からないところもありますが、人間の顔を誇張し、あるものは鬼の形相に見立て、演じる立場も仮面によって観者に知らしめるのは非日常空間としての宗教や政治にも役立てていたのだろうと思いました。図録にこんな文章がありました。「一般的に仮面の展覧会とは、仮面を身につける人と場ーつまり変身ともどきにより創造された異空間ーに焦点が当てられ、仮面の造形や意匠、その機能が紹介されるのではないだろうか。かかる他の展覧会と比較すれば、本展は”仮面”を題材としつつも、それらの背後にある”音”と”音楽”を定位にしようと試みた。やや趣を異にした内容かもしれない。」(渡邊浩貴著)私は展覧会場に入った途端、仮面だけではなく、その背後にある文化伝承の検証に気づきました。確かに仮面は単なる美術的な面白みだけではない要素が満載で、民俗学の視点からすれば、地域芸能、つまり音楽発祥に付随する産物としての研究対象になるものだからです。とは言っても私は仮面に造形的な面白みを見いだして、自分の創作活動の活性化を図る者です。学問とは別の観点から、カタチの誇張された際どい造形に楽しさを感じました。