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「転換期の芸術」について
「世紀末芸術」(高階秀爾著 筑摩書房)の「転換期の芸術」について、気に留めた箇所をピックアップしていきます。19世紀から20世紀に移行する時代に芸術界に転換期が訪れました。「1894年2月、ベルギーの主都ブリュッセルにおいて、『自由美学』と題する大がかりな展覧会が開催された。~略~それは、既成の権威や過去の形式にはとらわれない文字通り『自由な』美の饗宴であった。この会場を訪れた人びとは、絵画、彫刻、工芸、版画、デザイン、ポスター等のさまざまな作品を眼にし、聞き慣れぬドビュッシーの音楽に耳を傾けて、いささかとまどいを感じながらも、そこには何か新しいエネルギーと新しい探究の方向とを、はっきりと感じとったのである。~略~1894年の『自由美学』の展覧会が持っている深い意味とは、何よりもそれが従来の枠にはまった芸術観というものを、すっかり無効にしてしまう点にあった。それは、ピサロやルノワールやゴーガンが顔をそろえているにしても、かつての印象派グループ展のような絵画の展覧会ではなかった。また、モリスの本やアシュビーの食器がならんでいるからといって、工芸展だということもできない。いわんやシュレやロートレックのポスターがあるからといって、商業的性格の博覧会だと決めるわけにはなおさらいかない。この展覧会は、それらのいずれでもなく、しかも同時にそれらすべての要素を含んでいた。つまりそれまで考えられていたようなどんな展覧会の定義にもあてはめることのできない、きわめて幅の広い性格を持っていたのである。」それは突如企画されたものではなく、さまざまなイズム(主義)を巻き込んで、起こるべくして起こった分野横断的な潮流のように私には思えます。「19世紀における芸術の分業化は、20世紀における芸術の綜合へと大きく転換した。19世紀末は、その転換がようやくはっきりした形をとって現実の歴史に見られるようになった時期であり、『自由美学』の展覧会は、その雄弁な例証のひとつにほかならなかったのである。」今回はここまでにします。