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「新しい芸術理念」について
「世紀末芸術」(高階秀爾著 筑摩書房)の「新しい芸術理念」について、気に留めた箇所をピックアップしていきます。「『自由美学』の展覧会から2年後、パリのプロヴァンス街に奇妙な曲線模様の装飾に飾られた店が出現して、人びとの注目を集めた。当時の前衛的な芸術に理解のあった美術商ビングの店がそれである。そしてその室内装飾を担当したのは、『自由美学』の展覧会でも活躍したベルギー生まれの建築家、画家アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデその人であった。ビングは、新しく誕生した彼の店に『アール・ヌーヴォー(新しい芸術)』という名前をつけた。やがて19世紀末から20世紀初頭にかけて世界の多くの国ぐにを風靡するようになる新しい様式の名称は、この時はじめて歴史に登場してくるわけである。」それから汎ヨーロッパ的美学の運動が展開していくことになったようです。「アール・ヌーヴォー、モダン・スタイル、ユーゲントシュティル、スティーレ・リバティ、アルテ・ホベン等々、各国それぞれの言葉であらわされる一連の芸術運動が、1900年という世紀の変り目の前後わずか数年の間に全ヨーロッパを覆ってしまったということは、この動きがいかにひとつの歴史的必然にもとづいていたかということを、何よりも雄弁に立証するものであろう。」引用した文章に「奇妙な曲線模様の装飾」とあって、私はこの曲線模様が大好きで、海外で暮らしていた時もその資料をかなり手に入れてきました。曲線模様が植物を戯画したものであったり、アルファベットに応用されていたりして、私自身も楽しみながらデザインを試みたこともありました。20世紀初頭の流行とは言え、現代でも独特な美しさがあるのは確かです。「今やヨーロッパ芸術は、新古典主義以来失われていた統一的様式をふたたび見出そうとする。むろんそれは、容易に到達されるものではないだろう。しかし、少なくともその意図だけは、これら名称だけからも明らかである。とすれば、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語等、さまざまな言葉で語られる世紀末芸術の動きが、その造形表現においては、各国共通のエスペラントを持っていたことも、むしろ当然というべきであろう。」今回はここまでにします。