Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「頽廃と新生」について
「世紀末芸術」(高階秀爾著 筑摩書房)の序章「世紀末芸術とは何か」という章の中で、最後に「頽廃と新生」の単元がありました。これについて気に留めた箇所をピックアップしていきます。「いわゆる耽美派の運動を単なる芸術運動と見る誤りは明らかであろう。その魅惑的な名称にもかかわらず、それは結果的には『美』のための運動ですらない。なるほど、たしかに彼らは、『美』を旗印として社会に公然と反逆した。そのような反抗が、やがてつぎに見るような世紀末の『怒れる若者たち』を生み出して行く。しかし、そのはなばなしい反逆のもたらした最終的収支決算書はどのようなものであったか。《その全成果は、ほんのわずかばかりの『美』と、それでバランスをとることなど到底できぬほど大きな『生』の無意味な消耗だった》のである。」それでは「怒れる若者たち」とはどのようなものだったのか、文章から拾います。「世紀末のヨーロッパには、各地に、反社会的性格の芸術家集団が生まれた。一般の人びとには意味のわからないヘブライ語の名称をグループの旗印とし、仲間の間だけで通ずる特殊な『陰語』を持っていたパリのナビ派がそうであり、バルセロナの酒場『四匹の猫』に集ったピカソやノネルたちの仲間がそうであった。」やがて新生の動きも見えてきます。「新しい材料や新しい技術の芸術世界への導入、東洋世界や古代民族などの新しい世界の発見、多くの芸術論やジャーナリズムの繁栄に見られる旺盛な批評精神、造形芸術のみならず、生活様式から風俗にいたるまで見られる新しいものへの強い意欲、地域的特殊性を越えた国際的動きーたしかにこれらの特質は、世紀末という時代をいちじるしくあの15世紀末のイタリアの状況に接近させている。事実、ワイルド(オスカー・ワイルド)の言う通り、いやワイルドが言うよりももっと本質的な意味において、それは新しい時代を開くルネッサンスにほかならなかったのである。」今回はここまでにします。