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「よく見る夢」について
「世紀末芸術」(高階秀爾著 筑摩書房)の「よく見る夢」について、気に留めた箇所をピックアップしていきます。「芸術のあらゆる領域にわたって、西欧のほとんどあらゆる国ぐにで、数多くの画家、彫刻家、詩人、小説家がそれぞれ自己の夢を追いながら、この時代には不思議に同じような主題が、絶えず繰り返された。蚕室にうごめく無数のかいこたちが、お互いに相談するわけでもないのにいつの間にか皆同じような繭を紡ぎ出すように、この時代の芸術家たちは、期せずして同じ夢の繭を紡ぎ出していた。そのような繭のひとつから生まれた華麗な幻の蝶が、ヴェルレーヌの『夢の女』であり、またビアズリー、トーロップ、クリムト、ドニ、その他多くの画家たちの『永遠の女性』であったのである。」代表としてサロメが登場してきます。「事実、中世においてしばしば題材にとり上げられたサロメは、ほとんどつねに踊り子であった。しなやかな身のこなしと、明るく健康な肢体に恵まれた生身の人間であった。しかし、19世紀の末にふたたび登場してきたサロメは、モローの作品においても、ビアズリーとワイルドにおいても踊り子であるよりもまず女であり、それも官能と罪の香りにむせかえる女であり、奢りと逸楽に飽きた永遠の夢の女なのである。」私は20代の頃、ウィーン国立歌劇場でR・シュトラウスの歌劇「サロメ」を観て、この雰囲気がよく分かりました。次に私が関心を持つ仮面を主題にした文章が出てきます。「もともと仮面彫刻というものは、写実的なものであっても幻想的なものであっても、つねに不気味な魔力を漂わせている。あきらかに人間の顔を写し出したものでありながら、あきらかに人間そのものではない仮面は、いわば人間と物質との中間にあってそのどちらでもない不思議な存在となる。仮面の持つ魔力をいうのも、ここから生まれてくるのであって、事実部族社会の人たちは、(時には文明の世に住むわれわれ現代人でさえ)仮面をかぶることによって、神にでも悪魔にでもなれると信じこんでいるのである。」今回はここまでにします。