2025.01.06
「世紀末芸術」(高階秀爾著 筑摩書房)の「綜合主義」と「科学主義」について、気に留めた箇所をピックアップしていきます。印象派に不満があったゴーガンが提唱した綜合主義とは何か、次の文章を引用します。「明確なデッサンによって形態が確認されるのと並んで、色彩も分割から綜合へと向う。印象派の持っていたこまかい筆の動きではなくて、日本の浮世世版画に見られるような平坦な色面構成が、綜合主義の特色となる。それはまた、自然の世界を写し出すことを離れて、自己の世界を開拓するようになる新しい絵画探求の第一歩でもあった。」次にオーリエの唱えた美学宣言です。「芸術作品とは、ひとつの精神的与件の、特殊な自然言語への翻訳である。その精神的与件とは、さまざまに変る価値のもので、最も小さい場合には画家の精神性の断片、最も大きな場合には、その画家の精神性の総体と各種の客観的存在の本質的精神性との総和となる。したがって、完全なる芸術作品とは、ひとつの新しい存在、それも独自の魂を持っているがゆえに完全に生きている存在と言うことができる。その作品の魂とは、芸術家の魂と自然の魂、あえて言えば父なる魂と母なる魂との綜合にほかならない。このようにして新しく生まれた存在とは、永遠に変化せず滅びもしないゆえにほとんど神に近い存在であり、ある種の条件のもので、それと共感し得る人には誰にでも、その魂の純粋さと奥深さとに比例した感動、理念、または特殊な感情を生起せしめることができるはずのものである。」次の単元では科学主義を扱っていますが、主にスーラの絵画分析から論考が導き出されていました。「きわめて厳密な科学理論をその背景に持っていたところに、新印象主義美学の理知的側面がはっきりとうかがわれるが、それはまた、芸術の領域のみにかぎらず、あらゆる分野で当時支配的であった実証主義的科学主義の、時には盲目的科学万能主義の反映にほかならなかったのである。」今回はここまでにします。