2025.01.15
今日の午前中、私は工房で新作の古木材加工をやっていました。同じ時間帯に家内が歯科医院に予約をとっていたので、家内の治療が終わって、午後になってから家内を誘って、東京町田市にある玉川大学教育博物館に「イコンにであう」展に出かけました。同展は新聞のアート情報欄で知りました。20代の頃、私はヨーロッパにいたので、教会は暫し歩けば見つけられたし、イコン(宗教画)を売っているギャラリーもあったりして大変身近でしたが、日本ではイコンを見る機会がほとんどなくなっていました。今日は久しぶりにキリスト教絵画の収集品を見てきました。イコンとは何か、図録から文章を引用いたします。「イコンとは、『像』を意味するギリシャ語のエイコーンに由来する呼称です。広義にはキリスト教の聖像全般を含みますが、狭義には東方正教会において崇敬される板絵の聖像画をさします。このイコンには、イエス・キリスト、聖母マリア、聖人、天使の肖像や聖書に記される重要なできごと、たとえ話の説話物語などをあらわしたものがあり、大きさや形態もさまざまです。~略~それらは識字率の低い時代に、『目で見る聖書』としての役割を果たし、キリスト教の布教に大いに貢献しました。~略~『神の原像を映し出す鏡』『目に見えない聖なる原像に向けて開かれた窓』と規定されるイコンでは、人間を超越した神聖な存在であり、永遠に不変の存在である神の姿をあらわすために、既存の図像を原型として忠実に模倣することがおこなわれます。」(荻原哉著)イコンの制作は創造的行為ではなく、忠実な模倣が全てだそうで、ルネサンスあたりに盛んに描かれていた宗教画とは根本が違うというわけです。日本の宗教画家山下りんの伝記「白光」(朝井まかて著 文芸春秋)の中で、ロシアにイコンを学ぶため渡航した山下りんが、エルミタージュ美術館で見たイタリア・ルネサンスの絵画に心が躍った場面がありました。イコンは芸術作品ではなく、あくまでも信仰の対象として具現化された絵画なのだという認識が改めて問われた重要な場面だったと私は思い出しました。同展にはその山下りんのイコンもありました。