Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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元同僚の展覧会巡り
昨日、工房では乾燥した陶彫作品に仕上げをして、化粧掛けを施し、窯入れをしました。窯での焼成中は窯以外のブレーカーを落とし、焼成中は電源が切れないように配慮しているのです。そのため、今日は工房の照明等が使えず、工房での通常の作業は休みました。朝、家内を和楽器の演奏会場に送った後、元同僚がやっているグループ展や個展を巡ることにしました。私は3年前に校長を退職して、ずっと続けていた彫刻の仕事一本になりましたが、同じように書道や刺し子をやっていた管理職がいて、彼らも表現活動に勤しんでいるのです。まず、神奈川県民ホールギャラリーで今日から開催されている書道展に出品している元同僚は、私と管理職になった時期が一緒で、お互い仕事の悩みを打ち明けてきた仲間です。来週から始まる如月展にも出品を依頼しています。彼の書は、従来の定型を打ち破ろうとする意欲が見えている力作で、そうなると抽象芸術に近くなっていく空気感を感じました。理屈ではなく感覚で捉える段階に差し掛かっている彼の書は、これから面白くなりそうで期待が膨らみます。書の世界の広がりと深さを考える契機に、私は台湾にある故宮博物院での体験を彼に語りました。書の起源は中国にありますが、文字のくずしの巧さは日本の伝統芸で、こうしたことを学ぶ機会があるのではないかと彼に提案しました。次に私が訪れたのは山手外人居留地にあるエリスマン邸地下ギャラリーで、ここで管理職を退職した女流刺し子作家が個展をやっていました。彼女は手間のかかる刺し子で、世界を含めた各地の建物を表現しているのですが、今回のテーマが百雲繚乱と称して、空に浮かぶ雲が描かれていました。建物は現存するもので、それを刺し子によって再現する世界ですが、その建物の上を流れゆく雲にスポットを当てたことの意義を私は感じ取りました。流動する自然は何よりも面白いもので、モネの睡蓮が浮かぶ水の世界にも繋がる要素があります。そちらを主体に今後の刺し子をやってみてはどうかと、私は彼女に提案をしてみました。教職を退職しても表現活動には退職がありません。それがいいのです。同じ仲間がいることで私も勇気をいただきました。