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八重洲の「アルプ展」
先日、東京八重洲にあるアーティゾン美術館で開催されている「アルプ展」に行ってきました。正確には「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展で、要するにアルプ夫妻によるデザインや彫刻による2人展なのでした。私は彫刻家ジャン・アルプの作品を知っていても、ゾフィー・トイバー=アルプは知らず、本展で彼女がテキスタイルから様々なデザインへ展開した作品の実績を知ることが出来ました。夫妻で協働した制作もあり、興味深く鑑賞しました。図録によると「1930年代後半に、1918年の《デュオ=コラージュ》以来となる、久々の協働での作品制作がなされているのは、この状況(※ナチス政権のこと)と無縁ではないだろう。《夫婦彫刻》と《標抗》という2点の彫刻がそれにあたる。この協働がどちらに発して主導されたものかは不明である。木を用いた立体作品を既に手がけていたトイバー=アルプのみならず、アルプもまた1930年初めから主に石膏で彫刻に取り組み始めており、自然物の組成や循環をモデルとする有機的な形態を生み出していた。丸みとしなやかなシャープさとが同居した協働による彫刻は、1910年代の《デュオ=コラージュ》とは対照的に、創造の自由の希求をめぐる連携が確認されているかのようである。」とありました。それでも私はアルプ個人の彫刻につい惹き込まれてしまうのです。「アルプの彫刻制作において、石膏は特に重要な素材であった。通常、石膏は粘土によるオリジナルの複製に用いる媒体で、多くの場合はその先に大理石のヴァージョンやブロンズへの鋳造を見据えた、彫刻制作の総体のプロセスでは過渡的な位置を占める。~略~大理石やブロンズと異なり、一旦形態を確定した後もヴォリュームを調整することのできる石膏が好適な素材であったであろうことは、想像に難くない。」(引用は全て島本英明著)本展ではジャン・アルプの形態がどのように作られていったのかがよく分かりました。またゾフィー・トイバー=アルプはデザイナーとして出発した故に匿名性があるため、資料が散在してしまった場合があり、その記録を履歴に起こすのが大変だったようです。それでも本展では彼女の色彩や形体を物語る資料に、その実力を垣間見た感じがしました。