2025.04.22
先日、家内と東京南青山にある根津美術館で開催されている「国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図」展に行ってきました。展示作品の数は少ないけれど、有名な屏風が3隻あって、それでも展覧会としての見応えが充分あると感じました。しかも外国人鑑賞者が多く、日本画の表現力を内外に誇っていました。まず、尾形光琳の「燕子花図屏風」です。作者は京都の呉服商に生まれたためか、意匠感覚に優れていて装飾的な作品を残しています。「燕子花図屏風」は六曲一双屏風に、燕子花の群生をデザインしていて、空間の在り方が現代風な感覚を与えてくれます。屏風仕立てのため、平面に描かれた燕子花に距離感が出てくるのが、私に面白さを齎せてくれます。この「燕子花図屏風」は国宝故か、私は何度も見たことがありますが、その度に新鮮な感動が甦ります。次に円山応挙の「藤花図屏風」です。総金地に藤を描いた作品は、幹や蔓は一気呵成の刷毛さばきによる「付立て」で描かれています。垂下する花房は微妙な色彩を重ね合わせ、ボリュームを実現させていて、まさに西洋の写実画のような趣で、墨の濃淡や広く空間をとった画面構成に、私は余白の美を感じ取ってしまいます。余白とは何も描かれていないのではなく、無が充満していると私は考えていて、描かないところが描いているところ以上に雄弁に空間を物語っていると私は見ています。画面全体を絵具で埋め尽くす西洋絵画との違いをよく示している好例ではないでしょうか。3点目は鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」です。檜の林と岩間を流れる渓流が連続する六曲一双屏風に、山百合の咲く夏の風景と桜が紅葉する秋の風景を描いていて、季節の移り変わりに装飾性を織り交ぜ、時に単純化して表現しています。鈴木其一は酒井抱一に学んだ画家で、琳派にあたります。他の2点に比べると絢爛たる風情がありますが、近代に近いためか、現代日本画に続く雰囲気を持っているように感じます。過去の琳派の画家の要素を取り入れてまとめあげた秀作だろうと思います。