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モンドリアンについて&読後感
「名画を見る眼 Ⅱ」(高階秀爾著 岩波新書)の最後の単元はモンドリアンの「ブロードウエイ・ブギウギ」です。「この大作は、驚くべきほど『老年』を感じさせない。いやそれどころか、あの1920年代の禁欲的な厳しい幾何学的作品に比べれば、はるかに明るく、軽快で、若々しい。モンドリアンは、多くの優れた革新的芸術家がそうであるように、早くから老成した面影を見せていながら、死ぬまで精神の若さを失わなかった画家であるが、しかしそれにしても、最晩年になって突如として燃え上がってきた青春の歌声のようなこの若々しいエネルギーは、普通ではほとんど信じ難いほどのものである。~略~幾何学的なものに対するモンドリアンの好みが、単に風土の影響だけでなく、彼本来のなかにひそんでいたものであったことは、1909年頃から何回か繰り返されたあの有名な樹木の連作にはっきりとうかがうことができる。それは、最初は大きくしなうような曲線を示す樹の枝をそのまま写し出したものであるが、何枚となくその同じ樹を描いているうちに、大小の枝の曲線は次第に真っ直ぐになり、最後には完全に垂直線と水平線の組み合わせにまで変貌してしまっているのである。~略~すべて論理的に考えていかなければ気のすまないモンドリアンは、オランダ時代にすでにかなり抽象化された作品を作っていたにもかかわらず、パリにやってくるとあらためてキュビスムの美学を最初からやり直し、それをいっそう徹底させることによって、あの純粋に抽象的な構成にまで達するようになったのである。」書籍の内容としてはここまでになりますが、「名画を見る眼 」ⅠとⅡを通して、私は俄かに覚えている箇所があるので、若い頃に本書を既読していたのだろうと思っています。その当時の書籍が手元に残っていないので証拠はありませんが、私の西洋美術に対する憧れに本書は一役買っていたと考えています。大学生までの私は西洋美術一辺倒で、「奇想の系譜」を著した美術評論家辻惟雄氏の書籍に出会わなければ、日本美術に目覚めることがなかったのでした。本書を著した故高階秀爾氏は、私の美術史に関する最初に導きを与えてくれた人で、ここから自分の学問としての美術好きが始まったと言っても過言ではありません。