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「近代絵画の始まり」について
「近代絵画史(上)」(高階秀爾著 中公新書)の「第1章 近代絵画の始まり」について気になったところをピックアップしていきます。近代絵画は印象派から始まったと言われています。「その印象派といえども、突然生まれてきたものではない。広く知られているように、印象派は、今日でこそ多くの愛好者を得ているが、最初はさんざんな悪評と嘲笑を浴びせかけられた。つまり、印象派の画家たちは、かならずしも自らそう望んだわけではないにせよ、当時の美術界の主流を占めていたいわゆる『官展派』に対して、反逆者として歴史に登場してきた。~略~人間にとって普遍的な理性に基礎を置く古典主義は、それゆえに当然、普遍的な、すなわち万人にとって共通な理想の美を目ざさなければならなかった。それに対し、何にもまして個人の感受性を重んじたロマン主義は、美の規範を否定し、そのヒエラルキーを打破したと同時に、それぞれの芸術家の個性に根ざしたさまざまの『美』を生み出した。画家であると同時に優れた批評家でもあったドラクロアが、『美の多様性について』と題する評論を残しているのも、決して偶然ではない。すべての人間は、その理性を通じて共通の世界に結ばれているという古典主義的認識に代わって、人間はひとりひとりその『感じ方』において異なっているというロマン主義的考え方が登場してきたとき、様式上の統一性を失った『近代』絵画というものの誕生が約束されたのである。」その先駆者として本書はゴヤを取り上げています。「1792年、生死にかかわる大病に冒されたゴヤは、その結果、聴力を失って、音のない世界に投げ出されてしまった。陽気で、社交好きで、時に羽目をはずすほど行動的であったゴヤが、他人から隔絶された孤独な、ただ見るだけの人間になってしまったのである。この病気からの快復期に、彼がはじめて注文によらない自由な発想の作品を描いていることは、この不幸な出来事が彼のなかに何か決定的な変化をもたらしたことを物語っている。聴力を失い、宮廷での平穏な生活を失った彼のなかに、しだいに近代人が目覚めてくることとなるのである。」今回はここまでにします。