2025.05.05
陶彫作品の新作に貼る印について述べます。ほとんどの視覚表現の作品には作者のサインがつきます。それがオリジナル作品であるという証拠になり、複数作品が存在する版画にはナンバリングもついています。それを落款と呼ぶ場合もあり、調べてみると奥の深いものであることが分かります。ネットによると落款とは、落成款識の略語で、書画を作成した際に詩文などを書き付けたもので、その時捺す印章を落款印と言うそうです。署名用の印そのものを落款と称することもあるようです。印は主に篆書体を用い、それは中国を起源として、主に篆書を印文に彫ることから篆刻といいます。篆刻には字の周囲を彫る陽刻(朱文)と字そのものを彫る陰刻(白文)がありますが、両方を交えたものを朱白相関といいます。それはさておき、私の陶彫作品にどう落款を捺して完成品にしようか、随分前に思案したことがあり、和紙に捺印して、それを陶彫立体の見えない部分に貼り付けようとその時決めました。そこに番号も付けました。私の作品が集合彫刻であるため、番号同士を合わせることで、組み立てや分解が可能になるからです。しかも私は篆刻を自由化し、抽象絵画のように線で構成された図像に変えました。氏名にも漢字の他にアルファベットも多用して、迷路のような表現にすることを目ざしたのでした。いわば私は篆刻を小さな絵画作品として扱っていて、しかも新作の陶彫作品には新作の印を彫ることにしたのでした。そのため新作ごとに新しい印が出来上がって、今では相当な数の印が収納箱に眠っています。篆刻を小さな絵画作品としたことで、私は毎回印を彫るのが大好きになっています。今日は新作の印のデザインをして、印刀で彫りました。彫る前に石を印床に嵌め込むと私の気分は揚がりました。彫る時間は2時間程度だったでしょうか。新作は陽刻(朱文)にしました。漢字とアルファベットを混在させてまとめてみました。