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「フォーヴの画家たち」について
「近代絵画史(下)」(高階秀爾著 中公新書)の「第16章 フォーヴの画家たち」について気になったところをピックアップしていきます。ここでは私が注目した3人の画家を取り上げます。まず、ヴラマンク。「ヴラマンクは、絵画によって何よりもまず『自己』を表現しようとした。絵画は、彼にとっては、ひとつの秩序ある自律的世界というよりも、彼を陶酔させるスピード感や彼の愛好したヴァイオリン演奏と同じように、生命表現の手段であった。彼は、マティスのように絵画のために生涯を捧げたのではなくて、生きるために絵画を選んだのである。このような画家が表現主義者になるのは、むしろ当然のことであったろう。激しい原色の乱舞のなかでさえ洗練された調和の感覚を失わなかった多くのフランスのフォーヴの画家たちのなかで、ヴラマンクだけが粗野なまでの色彩の不協和音と誇張された醜怪な表情によってドイツ表現主義の画家に近いものを感じさせるのも、決して不思議ではない。」次はドラン。「性格的にもヴラマンクより穏やかで、伝統的な表現をもよく消化していたドランは、フォーヴ時代の鮮烈な色彩の作品においても、故意に不協和音をぶつけ合うようなことはせず、印象派や、とくに新印象派の美学を通じて学んだ色彩の調和を画面に生かして、見事な色彩の抒情詩を歌い上げた。その点においても、ドランは、マティスと多くの共通するものを持っており、事実マティスから、少なからぬ影響を受けている。」最後はルオー。「ルオーのこの激しい表現主義も、第一次大戦以降、しだいに落ち着いた、静かな世界へと移っていった。おぞましい人間像のかわりに、神や聖女が登場し、風景も優しさを取り戻すのである。~略~それに応じて、表現技法もずっと落ち着いた入念なものとなり、豊かなマティエールに支えられた厚塗りの油絵具が、まるで七宝焼や陶器の肌を思わせるような深い輝きを湛えて、画面いっぱいに豊麗な色彩世界を展開して見せる。」今回はここまでにします。