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「幻想の系譜」について
「近代絵画史(下)」(高階秀爾著 中公新書)の「第19章 幻想の系譜」について気になったところをピックアップしていきます。「写実主義というのは、少なくともルネサンス以来の西欧の絵画の歴史においては、ものの見方であると同時に表現の技術であった。『素朴派』の画家たちは、ちょうど子供と同じように、技術的な修練を重ねる機会を持たず、またその気もなかったため、写実主義が絵画の基本的条件のひとつと考えられていたあいだは、芸術の歴史に参加することはありえなかった。また、彼ら自身にしても、そのようなことは考えなかったであろう。20世紀の『素朴派』たちの場合でも、彼らを歴史の舞台に引っ張り上げたのは、アポリネールやヴィルヘルム・ウーデのような批評家たちであり、カンディンスキーやピカソのような専門の画家たちであって、彼ら自身ではない。」ここで2人の画家を取り上げます。まず、ルソー。「おそらくルソーは、あまりにも生き生きとした想像力に恵まれていたので、自分自身の幻想の世界と現実との区別がつかなくなってしまっていたのであろう。詩人のジャン・コクトーは、1897年アンデパンダン展に出品された《眠るジプシー女》について、この画面に登場するライオンや河は、眠っているジプシー女の夢に出てくるものであったろうと述べているが、それ以上に、この画面が、そしてルソーの描き出す映像世界のすべてが、現実以上に強烈な彼の夢にほかならなかったのである。」次にシャガール。「多様な民族的特質が発揮される現代絵画の歴史においても、シャガールくらいそのインスピレーションにおいて、自己の属する民族の血に忠実であった画家は例が少ないと言ってよい。その民族的な伝承や風習を取り上げて奔放に造形化し、華麗に飾りたてたところに、あの屋根の上のヴァイオリン弾きとか、空を飛ぶ恋人たちとか、空中で音楽を奏する動物たちとか、首のとれた農婦など、シャガール特有の、しかしユダヤ的雰囲気の濃厚なあの幻想世界が生まれてくるのである。」今回はここまでにします。