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映画「国宝」雑感
私は工房で作業をする時は、ラジオを何気なく聞いています。今日も朝からFMヨコハマをつけていましたが、番組のMCが映画「国宝」の話をしていて興味が湧きました。今日は陶彫制作を早めに切り上げて、鴨居のエンターテイメント系映画館に家内を誘って、映画「国宝」を観に行きました。家内は胡弓の演奏者で、芸の世界に生きる者として映画「国宝」に関心があるのではないかと私は察していました。本作は歌舞伎の世界をドラマに仕立てたもので、ドラマチックな展開があって面白い題材だなぁと思いました。本作の主人公は2人います。一人は任侠の一門に生まれ、ヤクザの抗争で親を殺され、歌舞伎役者に引き取られます。もう一人はその歌舞伎役者の一門に生まれた御曹司で、その2人が同い年だったことで切磋琢磨して、芸の道に精進していく物語です。2人とも美形だったために女形をはり、歌舞伎でお馴染みの演目が次々と出てきて、しかも実際の歌舞伎より映画版としてアレンジされているため、あらゆる角度から見た舞台演出や、裏方の様子なども描かれて、3時間の長丁場でも観客を飽きさせることなく進行していきました。任侠の一門に生まれた主人公は、芸事に長けた才能を持ち、しかも芸以外の全てを捨ててもよいと悪魔と取引する場面がありましたが、どうしても手に入らないものが血統。つまり歌舞伎には血縁関係が根強くあって、歌舞伎役者の一門に生まれた主人公を羨んだりしましたが、一門を継ぐことになったのは、何と血の繋がりのない任侠の一門に生まれた主人公でした。ところが先代の死去によって事態が一変、素性を週刊誌にすっぱ抜かれて、歌舞伎界を追われてしまうのです。それでも芸道の性質上、時に昇降する潮流に翻弄されつつ、再び2人が同じ舞台を踏む機会が訪れていました。芸を磨くとはどういうことか、これは家内ばかりではなく、私の創作活動にも関係するような気がします。芸術のために犠牲を払った先達は数多くおります。他者を惹きつけ、感動させるもの、それは媒体を問わず存在していると私は考えています。