Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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映画「私たちが光と想うすべて」雑感
今日は工房での陶彫制作を午前中で切り上げて、家内と横浜の中心部にあるミニシアターに出かけました。私がミニシアターに行くのは久しぶりで、万人が楽しめるものではない個性派映画を扱うミニシアターを、若い頃から私は度々訪れていました。今日観た映画はインドを舞台にした「私たちが光と想うすべて」で昨年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品です。本作はアジア特有の街のざわめきを背景に、出稼ぎ都市で生きている看護師たちの日常を描いていて、その微細な人との関わりで物語が進行していきました。図録の解説から骨子の部分を拾います。「オープニングの画面を見たとき、ドキュメンタリーかと思った。~略~主人公は人というより街。そこにひしめく、人、人、人。喧騒と雑踏と、色と匂い。インドはカーストと階級の格差の大きい社会だ。本作にカーストは出てこないが、階級は大きく前景化する。~略~ムンバイの病院で看護師を務めるふたりの女性、年上のプラバと若いアヌは姉妹のように部屋をシェアしている。プラバは結婚しているが、夫はドイツに出稼ぎに行ったまま、音信が絶えた。独身のアヌは、異教徒のムスリム青年と恋をしているが、親に反対されることを恐れている。~略~静謐な画面、年配の俳優の抑制された演技、都市や地方のリアルをそのまま切りとったような背景、劇的な展開のないストーリー、解決のないエンディング…本作は欧米の実験的なニュー・シネマの影響を受けた気配がする。」(上野千鶴子著)本作は明らかに娯楽作品ではなく、インドの現実社会を垣間見せた社会性のあるドラマだと感じました。アクションと舞踏で荒唐無稽なインド映画とは対照的な位置にある詩情たっぷりな展開に、インドならではの情緒も感じました。このまわりくどい展開が、同伴した家内はやや苦手だったらしく、私も納得のいかない部分もありましたが、クオリティの高い映画には間違いがなく、見てよかったという感想を持ちました。