2025.09.18
「芸術家列伝1・2・3」(ジョルジョ・ヴァザーリ著 田中英道・森雅彦訳)を全て読み終えた総括として、このNOTE(ブログ)を書いています。20代の頃、私はオーストリアに住んでいて、そこを起点にヨーロッパ各地に旅行に出ていました。イタリアへは幾度となく出かけてルネサンス美術を堪能していましたが、ラファエㇽロ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロの三大巨匠については多少の知識がありましたが、当時は勉強不足だったので、もう少し多くの芸術家たちを深掘りすれば良かったと思える場面がありました。国際的に知名度のある美術館にはイギリスと北欧を除いて、全て回ったつもりが、多くの情報量に圧し潰されそうにもなりました。もし再訪するなら、自分なりのテーマを決めていきたいと考えています。今回「芸術家列伝」を読んだので、やはり関心はルネサンス美術で、西洋美術の図法的論理としての完成があった一方、古代ギリシャ美術の復興を意味するルネサンスの意味通り、バランスのとれた人体の美しさを充分味わいたいと考えています。そこからマニエリスムやバロックが登場して、19世紀に至るまで西洋美術の確固たる伝統が続いていたのでした。私は20代でヨーロッパに到着した早々、そうした西洋美術の潮流を浴びて、自分との感性の違いを認識し、時に辟易してしまい、とてもじゃないけれど、西洋美術を自分の中に取り込むことは不可能だと感じました。ルネサンス美術は宗教の解釈でもあり、キリスト教に傾倒していない自分は、神のために描くことは自分の本望ではないと思ったのでした。ただし、美術として宗教性を離れて鑑賞することは可能で、前述した三大巨匠を初め、ジョットやマザッチョ、ピエロ・デラ・フランチェスカ、ボッティチェリなどをじっくり時間をかけて美的解釈を試みたかったと思っています。あの頃は学生時代に教科書で見た作品の本物に触れた程度だったことで、雑駁な鑑賞をしてしまい、今も残念な思いが頭を過ります。鑑賞にはかなり知識が必要だと分かり、それがないと面白さは半減します。美術館に行く時、私はその展覧会について事前に調べて行くようにしていて、今イタリアに旅立ったとすれば、長く滞在をしてしまうことになりそうです。ルネサンス期に書かれた「芸術家列伝」はその後の研究分析があったとしても、私には大きな足跡を残した書籍だったことに疑う余地はありません。