8月 台風がくるぞと 雨戸に釘を打ちながら 祖父が言った 柿木が倒れるぞと 太い枝に縄をかけながら 父が言った
暗い密室の中で うずくまって 身体を寄せ合っていると 外は魑魅魍魎に取り囲まれて トタンの屋根にうねって 鱗をこすりつけていった
翌朝静かになって 密室から這い出してみると 水溜りに油が浮いて模様を描いた きっとこれは 魑魅魍魎が人を食らって よだれを垂らしたのだ