「ピクチャレスクとイギリス近代」(今村隆男著 音羽書房鶴見書店)の「第1章 ピクチャレスクとは何か」の中の「4ピクチャレスクと森林」の気に留めた箇所を取り上げます。「激動のピクチャレスクの時代に描かれた田園風景の中で、現実の変化が際立ち、それゆえに風景美に最も影響が大きかったと思われるのは森林である。~略~ピクチャレスクの観察者達は、この植林の動きを批判している。彼らの反発の理由は、外来種の植林はその土地の気候や風土に合わないため発育が悪く、また外来種であること自体が在来種から構成されてきた従来の風景の調和を乱すからというものである。しかし、彼らが外来種を排除する姿勢を見せたのは、発育が悪いという実利面や美観の面からだけではない。ピクチャレスクの風景は多分に表象的な要素をも含んでいた。~略~世代を越えて人々が試行錯誤を繰り返しながら積み上げてきた経験を尊重することで、理想社会の調和は多様性を統合しながら実現されるものであることが強調される。その結果として、各々の環境に応じて社会に階層的序列によって支配される秩序が生じたとしても、それは特定の世代によって修正されるべきものではない。バークは社会が形成されてゆく様を『自然の過程』と表現し、この尊重こそ革命中のフランスの指導者に欠けている点であるとする。自然の森は、時間の経過と共に様々な多様性を許容しながら理想的な美観を呈すべく形成されてゆくように定められているものであり、バークにとってはそれこそ人間社会が形成される際にモデルとすべきものなのだ。~略~庭園は、イギリスという国はどうあるべきかをエリート達が議論する場であったということだろう。その議論を通して、伝統的な社会・階層・秩序が維持されるべきことが主張され、その維持はキリスト教的なモラルにもつながっていた。風景論全般が一種の『リベラル・アーツ』だったのであり、ピクチャレスクの風景はそこに意味を読み込むテキストでもあるという一面を持っていたのである。」今回はここまでにします。