Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「労働者用コテージの改良」について

「ピクチャレスクとイギリス近代」(今村隆男著 音羽書房鶴見書店)の「第4章  ピクチャレスクと建築」の「4労働者用コテージの改良」を取り上げます。「『土地所有の紳士へのヒント』は最初の労働者用コテージの改革案であり、そのため先行書に頼るのではなく自らの経験によって書かれている。そこには、立面図と平面図の他に具体的な寸法や各材料の価格の詳細な見積もりまで記されており、平面図にはそれぞれ部屋の役割が細かに説明されている。極めて具体的で実用的なものである。この手法は明らかにパターン・ブックの様式を取り入れたものであるが、農場主や地所全体の所有者用の比較的大規模な建物を取り扱うそれまでのパターン・ブックとは全く異なり、田園で実際に働く労働者のために建てる小さなコテージが取り扱われた最初の建築書である。~略~簡潔さの中でも『規則性』を尊重するウッドの主張には新古典主義の様式を得意とする、1728年生まれという一世代前の建築家としての彼のこだわりが認められる。左右対称であることを尊重するウッドは、規則性を演出するためだけの為窓や為扉をつけている。『規則性は美だ』というウッドの主張は、その後、不規則性や多様性を重視するピクチャレスクの流行の高まりと共に消えゆく運命にあった。~略~ホランドはピクチャレスクという言葉を使っていないが、ここでは有用性と共に美観が意識され、両者の融合が目指されている。練り土レンガはこの両方に貢献する有効な手段として導入されようとしているのであり、のちに見るように19世紀に入るとガンディーらが練り土レンガを使った極めて斬新な形態のデザインを考案することにもつながる。~略~バーナードの『ピクチャレスクで、住むこともできるコテージ』は、富裕層のための装飾用と貧困層のための実用という平行して交わることの無かった二種類のコテージを、互いに融合させようという提案だったと思われる。実用的なコテージに美的要素を求めることで住居としての価値が高まり、それは居住者にとっても所有者つまり地主にとっても利益をもたらすという考え方である。これは、ピクチャレスクの美学が有用性を取り込んでいった最初のステップだった。」今回はここまでにします。

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