「ロマネスク美術革命」(金沢百枝著 新潮選書)を先日読み終えました。私自身のロマネスクに関する知識は薄っぺらなものでしたが、本書によってひとつの様式を体系的に学ぶことができました。ヨーロッパを席巻した各時代の様式の中でロマネスクはマイナーな分野であることを、私は本書を通して知りましたが、自分の師事した彫刻家池田宗弘先生は、ロマネスクの宗教美術を研究しにスペインに旅立っていったので、意外にも私にとってロマネスク美術には親近感があったのでした。ただし、私が20代後半に滞在していたオーストリアのウィーンでは、当時通っていた学校の近くにゴシックの代表格とも言うべきシュテファン大聖堂が聳え立っていて、しかも周囲の建物の多くはバロック建築でした。周囲にロマネスク建築はなく、旧市街で夜を迎えると、バロック建築が怪物に見えてきて、忽ち私は怪物に取り囲まれてしまうような錯覚に陥りました。怪物と言えばロマネスク建築に見られる海獣たちの彫刻に私の興味は尽きません。以前NOTE(ブログ)の「河鍋暁斎の世界」を書いた文章の中で、私の妖怪趣味に触れた箇所があります。ロマネスクの海獣たちに私が惹かれる理由がそこにあります。本書の中でも「11世紀から12世紀のどの時点で、またどのようなきっかけで、この動物が跋扈しはじめるのかは、またしても定かではない。しかし、ヨーロッパ中の聖堂の装飾に、いわゆる中世の竜、ドラゴンが確かに誕生したのである。」とありました。本書執筆の動機についても著者は「あとがき」で触れています。「ロマネスク探求の旅は、まだ峠をひとつ越えたばかり。~略~わたしもフォシヨンのレトリックに酔い、柳(宗悦)先生の眼に感銘を受けたひとり。だがフォシヨンやシャピロがロマネスクについて激論を交わした1930年代から80年、日本に広く紹介されてからもすでに半世紀近く経とうとしている。そろそろロマネスクの美のことも、今の視点で語りなおしてもよいのではないかと感じていた。」ということは著者のロマネスクの旅はまだまだ続くということでしょうか。ともかく面白い論文であったのは間違いありません。