週末になりました。土曜日はその週の振り返りを行なうのですが、それを明日に回して、今日は漫画家つげ義春氏の逝去に関することを書きます。つげ義春氏の代表作「ねじ式」をいつ頃読んだものか私は忘れてしまいましたが、不気味で不条理な世界観に溢れた本作はずっと印象に残っていました。高校の同級生で俳優の竹中直人君が同氏の「無能の人」の映画監督をしていたことも私の記憶にあり、この作者にはどんな成育歴があるのだろうと思っていました。今日の新聞に訃報が載っていて、ある程度詳しいことが分かりました。享年88歳。特異な世界を描いた作者の生い立ちを記事から引用いたします。「貧しくて学校嫌いで対人恐怖症。家庭に恵まれず、家出しようと2度密航を企てた。長じては自殺未遂と蒸発、妻子を持つも不安神経症に苦しんだ。だがそんな人生から紡ぎ出された作品は、土着的な詩情が濃く、暗くてもどこか滑稽で開放的。根無し草の不安に、静かな諦念が寄り添いもする。じんわりしみ出すようなそのぬくもりは、つげさんの愛した寂れた温泉宿のようだ。」(小原篤著)同氏の漫画が掲載されたのは月間漫画「ガロ」で、その「ガロ」が出版されていた当時、私はそれを手に取っていた記憶があります。その雑誌は他の漫画雑誌と違って、芸術性に富んだ独特な雰囲気がありました。同紙では白土三平「カムイ伝」が有名でしたが、後で知ったことで美術家赤瀬川原平「お座敷」も「ガロ」に掲載されていたようです。赤瀬川氏の個展でその漫画原稿を見ました。またつげ氏の「ねじ式」を捩った「おざ式」という漫画も描かれていたようですが、2人の交流があったのかどうか分かりません。当時から視覚文化の先端をいく漫画があったこと、しかも情念に充ちた不条理な世界を表現していたこと、現在でも日本のアニメーションが視覚文化の先端をいっていることと無関係なはずはないと私は考えています。日本人独特な個性はじんわりと湿っていて、それでいて特異な世界観を持っていると感じているのは私だけではないでしょう。