「死、欲望、人形」(ピーター・ウェブ、ロバート・ショート著 相馬俊樹訳 国書刊行会)の「パリ1938-1939」について、気に留まった箇所を取り上げます。「1938年にパリに到着すると、ベルメールはシュルレアリストたちに暖かく迎えいれられた。以前からの友人であるポール・エリュアール、ロベール・ヴァランセ、アンリ・パリゾはついに自分らと合流できたことに歓喜し、アンドレ・ブルトンは1934年にウルスラを通じてはじまった交流を再開できると喜んだ。~略~『枝状に刻み込まれた流し目』での創作で、ベルメールは以後の生涯でずっと適用することとなるある方法を考えだした。与えられた文意をただたどるだけの作品を提示するかわりに、すでに自らの芸術の展開の一部となっている諸観念を再利用し、あるいは再生させたのである。にもかかわらずその成果は、あべこべに文章の方がイメージを入念に再現したかのような、文章とイメージとの顕著な同質性をもたらした。~略~1938年と1939年に描かれた作品は、身体と、とりわけその頭部が様々な身体パーツと様々な他の身体との混淆で構成される女性像である。これには参照すべき前例があった。フランス革命の時代にこの種の絵画が貴族や教会の人間を風刺するために描かれ、さらにその着想源となったのはダリの称賛した16世紀イタリアの画家ジョゼッペ・アルチンボルドであった。~略~混成イメージというのは、当時、シュルレアリスムに特徴的な表現であったが、ベルメールの場合、独自の仕方でそれを採用していた。ダリの混成人物像は幻覚の世界を呼び覚まし、一方、マックス・エルンストのそれは来たるべき恐怖を具現しているように思われる。しかしながら、ベルメールが関心を向けるのはハイブリッドの本質をあらわにすることであり、もつれ合った身体と脚の塊を通して欲望の真の解剖学を明らかにすることであった。」今回はここまでにします。