陶彫「発掘」シリーズXVI
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一昨日と昨日の朝日新聞「折々のことば」には同じ作家の言葉が掲載されていました。12日付「だが、虚栄心は押し殺されることはなく、傷つくだけだ。フランツ・カフカ」この言葉に著者の鷲田精一氏がコメントを寄せています。「虚栄心は人を『醜悪』にするから、本来『押し殺さなければならない』ものだとした後、チェコ出身の作家はさらにこう続けた。世間体や他人からの評価をたえず気にかけつつ、他者と較べて自分が優っていれば、悦に入る。ほんのわずかでも分が悪いと凹み、傷つくという、この執拗なまでの鬩ぎ合いが人柄なるものの核にあるのか。『カフカ断片集』(頭木弘樹編訳)から。」さらに13日付「何もしないことは、あらゆる悪徳の始まりであり、あらゆる美徳の頂点である。フランツ・カフカ」鷲田精一氏のコメントが続きます。「怠惰や無為無策は減点ものだし、傍観やサボタージュはときに他の人たちに対する大きな罪ともなる。一方、他の人への無用な介入はたいてい見苦しいもので、お節介や押しつけになる。そしてすぐにも強制に転化する。何もしないことと、していないふりをしてちゃんとやることの差は紙一重だ。『カフカ断片集』(頭木弘樹編訳)から。」カフカという作家は人との関わりの中で、さまざまな微妙な心理を読み取り、創作活動に反映していたことが2つの言葉から分かります。こうしたことを常に感じたり考えているカフカのような人は、きっとつきあいにくい人だろうなぁと私は思います。人の気持ちが多少理解できる大人になって、カフカの小説を読むと大変面白くて、ハマってしまう人が出てくるのは、私には理解できます。かく言う私もその一人ですが、中学生の頃に初めてカフカを読んだ私は、居心地の悪さがあって、カフカを好きになりませんでした。それでも何故か気になっていたので、中年になって読み始めたカフカは、何と面白い世界観をもった人なのか、改めてファンになった次第です。