Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「海獣たちの変貌」について

「ロマネスク美術革命」(金沢百枝著 新潮選書)の「第5章 海獣たちの変貌」の気に留まった箇所を取り上げます。まずケートスという海獣を取り上げます。「ケートスの図像化の歴史はきわめて古い。紀元前650年頃からギリシャ美術に登場する。海神ネレウスの娘ネレイスらの乗り物として、あるいは姫を襲う怪物として。人身御供として怪物に喰われる運命だったトロイの姫へシオネやエチオピアの姫アンドロメダの物語で、英雄ヘラクレスやペルセウスに退治される怪物こそケートスに他ならない。アンドロメダを襲うのはドラゴンではなかったかと思われるかもしれないけれど、それはずっと後、ルネサンス期絵画で描かれたアンドロメダ物語の印象がつよいからである。当初の怪物はケートスだった。~略~中世でもカロリング期までは、竜の形態はきちんと定まっていない。それはときに蛇として、ときにケートスとして描かれていた。しかし、ロマネスク期に状況は一変する。竜は定型化されていき、現代の私たちにもおなじみのかたちをもつようになったのだ。~略~中世のドラゴンの起源を中国の龍に、あるいはメソポタミアや中東から伝播した怪物の形象に求める説は根強い。とくに19世紀半ばから20世紀はじめにかけて、東方からの影響が力説されたのだけれど、その背景にはオリエンタリズムの隆盛があったことを念頭におかなければならない。~略~そもそもケートスと竜は、古代においても近しい関係にあった。先に挙げたオグデンの研究でも、ケートスは竜の仲間に数えられている。その幾つかある理由のうち、もっとも説得的な理由は、ヘシオドスの『神統記』がケートスをギリシャ神話のドラコーン類の始祖としていることである。また、英雄に倒される竜蛇の類とケートスの伝承には重なる部分が多く、物語の構造と主題においてケートス伝承との混淆が明らかな例もある。」今回はここまでにします。

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