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「聖母像の到来」結語&読後感

「聖母像の到来」(若桑みどり著 青土社)は最後の章を迎えました。「結語 『子を抱く女神』の世界史的展望」について、気になった箇所を取り上げます。本章は冒頭の文章が全体のまとめになっていました。「本論では、16世紀後半、ローマ・カトリック教会が対抗宗教改革期において、新たな聖母崇拝の教義を定め、これに基づいて聖母画像を再編し、再編された聖母の画像を宣教のための有効な武器として全世界に伝播させたこと、その世界的な聖母像の伝播のなかで、日本に到来した聖母像がいかに受容され、そしていかに変容したかをあきらかにした。これは16,17世紀に世界に伝播した聖母像と、これを受けて立った、アジアの女神像との遭遇と合体をテーマにしたものである。~略~人類の最古の崇拝像は妊娠した女性像であり、それは旧石器時代の後半からユーラシア大陸の広範な地域で発見された土偶であった。」これは生命を宿す女性に対する奇蹟と考えられていた証で、宗教概念が興る以前からの崇拝対象だったのでしょう。「概観すれば、世界各地の聖母像の中には、原初の大地母神を信仰する民衆の根強い信仰心が脈脈と流れていることがわかる。宗教の名は違い、その教義は異なっていても、世界史を通底する民衆の願いは支配と刑罰を示す剣を持つ男性神ではなく、生命と愛による救済を約束する子どもを抱いた女神であった。~略~アジア側からみるならば、西洋の母神は、文化の基層に存在した東アジアの女神と合体して、はじめて自己自身の像となったのである。この意味で、『マリア観音』は、西欧と東洋の二つの普遍宗教の融合、さらにそのはるか深層の、世界史的なロング・デュレとしての、女神への民衆信仰を凝縮させているのである。」本書から私は多くのことを学びました。まず、日本という島国に入って来た異端宗教が形を変えながらも長く信仰された経緯で、キリスト教の何がそんなに人々の心に届き、刻印されたのかであり、また宗教という分野の持つ根強いパワーです。私自身が納得できるところは、原初の大地母神を信じる民衆の心理で、私自身もそこに未来に繋がる希望が見えるからです。本書は私にとって大変インパクトのある内容だったと振り返っています。

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