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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
高校時代に現代詩を読み解きながら、何か不思議な世界にホッとため息をつく童話にも夢中になっていました。宮沢賢治の文学に触れたのは童話が最初でした。それもまずタイトルの不思議さに魅かれました。無国籍な、それでいて民話のようなタイトル。後に宮沢賢治に関する評論を読んで仏教思想が根底にあったり、教師の傍ら農業をしていたことや幅広い知識があって、宮沢賢治がこうした童話を書いていたことを知りました。でも初めて気持ちに飛び込んできたのは思想的なものではなく映像的なイメージでした。とくに「銀河鉄道の夜」は絵画を見るような情景が浮かんできて、そこに夏の、しかも少し肌寒い乾いた夏の夜の気配が感じられ、ずっとそのイメージを勝手に抱いたまま今に至っています。その最初の印象があるので何を読んでも、宮沢賢治はまず絵画世界ありき、というすり込まれたイメージから離れられません。作家の中でも特異な人という自分の中の位置づけは当時から間違っていないと思っています。                      Yutaka Aihara.com