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「古寺巡礼」読後感
とつおいつ考えながら大切に読んでいた「古寺巡礼」(和辻哲郎著 岩波文庫)を漸く読み終えました。解説には哲学者谷川徹三氏が寄稿しています。「『古寺巡礼』は大正8年(1919)和辻さん30歳の時、岩波書店から出された。昭和21年(1946)の『改訂版』によると、『大正7年の5月、二、三の友人とともに奈良付近の古寺を見物したときの印象記』とある。~略~まだ(谷川氏が)学生であった頃この書の初版本を愛読し、全集刊行の際、解説を書くために、初版本と改訂本とを読み比べた時にも、多くの個所で、和辻さんが削除した部分に、私は若い和辻さんの、全く我を忘れた感激の純度を、ひしひしと感じた。~略~和辻さんが削除した言葉には、感激による誇張があるにせよ、実感の生なましさが素直に出ていて、捨てがたいものがある。と同時に、後に学者として大成した和辻さんが、生来感覚の鋭敏な、感受性の豊かな、さらに感情量の大きな人であったことを証している点で、学者としての和辻さんの理解に資するものを含んでいる。」私が読んでいたのは勿論改訂本ではあるけれども、著者の鋭い感覚はよく伝わってきました。こんな視点もありました。「もちろんこの書の人々の心を捉えるのは、その『若い情熱』だけではない。この書がアジャンタの壁画の模写を友人の家で見るところから始まり、ギリシャ文化の影響が東漸から、初期仏像芸術の成立の経過を詳細に語っているように、世界的視野の中で、広く物を見、伎楽の面に接しても、当時の仮面劇の演出に思いをはせ、ひいては舞楽から猿楽、田楽、能、狂言と展開する舞台芸術を、自由に空想の翼をひろげて述べているようなところにもある。」空想の翼でこんなところにも着眼していました。「薬師寺の東院堂の聖観音の作者についての想像は、玄奘三蔵が長安に伴い帰った西域人で、彼はガンダーラ美術の間に育ち、グプタ朝の芸術に激動を受け、十年近い中国滞在で漢人の美術の素朴と勁直とに愛着をもち、日本に渡って大和の安らかな山河の中でこの像をつくったことになっている。」これは文学的魅力と解説者は捉えていて、著者の豊かな歴史的知識の裏付けがあっての想像だろうと私も思いました。