Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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不安定の中の安定
師匠である彫刻家池田宗弘先生の初期の作品に「不安定の中の安定」という真鍮直付けの作品があります。今回はその題名を借りただけで実際の彫刻のことではなく、自分が感じる不安定の中の安定について書きます。自分は幼い頃から心に不安定な感情を抱いていました。その不安定さも些細なことが多く、自分で解決できる程度のものでした。両親がいて何不自由なく育った自分にとって多少大袈裟ではありますが、心のバランスの悪さをずっと感じていたのです。引きこもりや荒れることもなく過ごした10代でしたが、常に他人を規範にして人と同じように目立たないように過ごしたいという願望がありました。心の安定は不思議なことに美術に関わっていることで得られました。一人で何かを作っている時が幸せでしたが、専門家になろうとした時から心の安定は不安定に変わりました。ところが今までと異なり、人より個性的であろうとする意志が芽生えました。振り返れば自分は他人との協働があまり得意でなかったのかもしれません。と言うのは美術に関わる不安定と幼い頃から持ち続けた不安定の質が違うような気がしていました。他人との協働による苦手意識は就職する際に克服し、組織の一員としてずっとやってきました。以来、組織に助けられ、また数年前から組織を率いる立場になっています。でも僅かに不安定な気分は今も残っていて、その気分との小さな闘いを日々繰り広げています。それが生きていくことなのかもしれません…。