2013.04.02
20世紀アメリカが生んだ異色の造形作家ジョセフ・コーネル。20世紀のピカソを初めとする革新的な芸術家達の生涯を賭けた華々しい活躍に比べると、内向的で地味なコーネルは、自分にとって現代美術史に隠れた謎に満ちた存在でした。コーネルの独特な作品を知ったのは、故瀧口修造による評論が契機になり、コーネルの箱に封じ込まれた小宇宙を一度この目で見てみたいと思っていたのでした。3年前、千葉にあるDIC川村記念美術館でコーネルの展覧会があって、ようやく実物と対面できました。これを見るために千葉までやってきた甲斐があったと思いました。まさに私的内面の吐露を詩魂をもって表わしていると言うべきか、アッサンブラージュの取り合わせの意味を改めて考えさせられました。そうしたコーネルに関する伝記が書店にあったので、早速購入して読み始めることにしました。「ジョセフ・コーネル 箱の中のユートピア」(デボラ・ソロモン著 林寿美・太田泰人・近藤学訳 白水社)を通勤時間帯にコツコツ読んでいこうと思います。波乱に富んだ人生ではなく、引篭もった一人だけの空間で、心の中にドラマを秘めた男の生涯が自分にはイメージされていますが、果たしてどうなのか、本書の中で描かれるコーネルの伝記を楽しんでみようと思います。