2016.11.17
現在、東京国立博物館平成館で開催中の「禅ー心をかたちにー」展で、心に響いた作品について述べてみたいと思います。私は展覧会ではタイトルや作者名をほとんど見ません。気になった作品を確認する時にだけ作者名を見ています。まず余計な知識を入れずに直視して、その作品がもつ表現力に心を浸そうとしているのです。おや?これはいいぞ、と心に響く感覚を大切にしているのです。ましてや音声ガイドは使ったことがありません。何らかの手引きは必要と思える時もあるのですが、10代の終わりから美術の道を歩んできた自負が、或いはそうさせているのかもしれません。本展でも直感を信じて展示を見て回りました。いくつか有名な作品があって思わず足を止めましたが、これは知識があったばかりの妨げか、それとも直接心に響いたのか自分でも定かではありません。たとえば雪舟の「慧可断臂図」や「秋冬山水図」がそれです。これはいい、と思うと同時に、これは雪舟だからいいのだと瞬時に思ってしまうのです。その中で目についたのが「竹林猿猴図屏風」でした。作者の長谷川等伯は知っていましたが、有名な「松林図屏風」ではなかったのが幸いでした。作者名は後で確認して、やっぱり等伯かぁと思ったのでした。竹葉や竹の節の描写に用いた墨の濃淡が、湿潤な空気や竹林の遠近を感じさせてくれました。画面の省略が「松林図屏風」に通じる雰囲気がありました。猿の親子は妙に可愛らしくて現代のゆるキャラのようでした。京都の相国寺所蔵の水墨画で、本展で「竹林猿猴図屏風」に出会えて良かったと思えた瞬間でした。