2024.05.14
「シュルレアリスムのために」(瀧口修造著 せりか書房)の、「前衛美術と文化的課題」の気に留めた箇所をピックアップいたしますが、著者が原稿を執筆したのは1930年から40年頃ということを考慮する必要があります。「現在の美術の文化性を決定する要素はいろいろあるであろうが、個性的欲求と集団的欲求とを調和させること、ないしは綜合させることにあるとわたしは考える。このことはもちろん個性的な表現を集団的な欲求のために抑圧し無視する意味ではない。~略~国策性は政治の主題であって、美術はそれに即応しつつ個有の動機をもたねばならないのである。」超現実主義に触れた箇所もありました。「すぐれた芸術の神秘的な部分は、無意識的欲望の現実的結晶だということに異論はあるまい。この無意識が現代の説明によってそれぞれ変化してはいるが、その凝結と訴求の真理は恒久的あるということができよう。ブルトンらの超現実性の理念が、きわめて急進的に見えながら、たえず芸術のうちにその解決を求めている事実はなにを物語るのだろうか。人間の行為そのものにはひとつの限界があり、そこに表現が必然化されるのである。あるいは永遠性の証拠が必要とされるのである。」抽象主義にも触れた箇所がありました。「現在の日本の抽象主義の傾向には、象形芸術と必然的な連関をもった一つの系(再現的要素は完全な客体に移行すべきモティーフとして存在する)と、完全に造型的理念として独立しようとする非象形芸術の系とが並存しているように見える。この二つの系はもちろん互いに矛盾しながらひとつの意志に沿っているように思える。」70年も前に書かれた評論ですが、改めて芸術の本質を浮き彫りにしていて、当時から比べれば多様化した2020年代の芸術表現にも一脈通じるものがあると私は感じました。言い回しの古さはともかくとして、優れた論考であることに違いはありません。