2024.05.21
「シュルレアリスムのために」(瀧口修造著 せりか書房)の、「影響について」は四つの論文に分かれていて、それぞれの気に留めた箇所をピックアップいたします。四つの論文は写真、ピカソ、エルンスト、ダリで、論文に貫通するのは影響についてです。「新即物主義、超現実主義、抽象主義などのイズムが、絵画でも写真でも並行的に存在するが、その相互の交流はかならずしも形式の領域内にとどまっていない。要するに写真が絵画に与える影響というべきものに関するかぎりは心理的であり、潜在的である。」次にピカソ。「ピカソの切断された風景、双生児的な肖像、色彩と面の解剖図、ゲルニカの火花、等々が模倣されるよりも、ピカソが歩いて来た路、彼が辿って来た体系を精密に知ることが現在われわれに残されたもっとも有意義な影響と見るべきかも知れない。それによって妙に伝説化されたピカソの前半生の過程がもっと明るみに出されるであろうし、おそまきながら、日本の近代絵画におけるキュビスムの『穴』を埋めることができるであろう。」次はエルンスト。「植物の群生を描いたエルンストの最近作のシリーズはわれわれの注意を惹いた傑作であった。この作品の解釈はいろいろな風になされるであろうが、一瞥して奇妙にアンリ・ルソーの原始林の傑作を想起させたことは、構図や、素材の類似からくる形の連想ばかりでなかったと思われる。エルンストの最近作の与える感動は、原始的なものと文明的なものとを結合させる磁力にあるといえないであろうか。(コラージュにおいては、『デペイズマン』(置換法)が露出していたが、これら油絵では技術のなかに完全に隠蔽されている)。」最後はダリ。「極端な超現実的な象徴性が、寸分の隙もなく、画面の持続性をもって描写されていることは従来のモンタージュ的方法に対して、画然と新しさを示した。これは映画のような現代的な物理感覚と絵画のあいだにも痛切に感じられていた。いわば深淵のように深い時間的空間的な飢えを満たしてくれるように思われたのであった。またそれは永遠性と現在性との抱合という古い絵画的な理想が、思いがけない現代の色彩と造形性とによって眼ざめさせられた驚きでもあった。謎と描写との結合が新たに絵画の生きたスペクタクル性を刺激しはじめたのである。」今回はここまでにします。