Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「シュルレアリスム十年の記」について
「シュルレアリスムのために」(瀧口修造著 せりか書房)の「シュルレアリスム十年の記」について、気に留めた箇所をピックアップいたします。この原稿は1940年に美術雑誌「アトリエ」に掲載されたもので、時代の古さは拭えませんが、当時の画壇を知る上では貴重な記録になっています。「シュルレアリスム美術は、種々の意味で詩とは無関係であり得ない。それはシュルレアリスム美術が文学的であるという特殊な意味とはまったく別の問題なのである。キュビスム運動でさえ、詩人と密接な関係があった。こうした現代美術のミリュは、日本では極度に不完全で不毛ではあるまいか。詩人が美術の世界に入るということはしばしば一種の闖入と見做される。しかし闖入と見なさざるをえないような事情が実際に起こりうるというのも、多くは変則な社会事情によるのだろう。」日本では乱立する美術団体があって、その弊害が他の領域との交渉を拒んでいたようです。「昭和12年の『みずゑ』主催海外超現実主義展は小規模ながら、資料的に全貌を伝えるのに役立った。その成果である『アルバム・シュルレアリスト』、それと期を同じくして出した『アトリエ』の前衛芸術特輯号は、前者は資料の点で、後者は批判や主張の反映とで、シュルレアリスムの主要な一時期の文献として挙げておかなければならぬ。~略~わたしの警戒しておきたいことは、従来の既成画壇的集団に見られたように単なる画壇政治的な意志によってのみ動向を決してほしくないという点である。従来の公募展は、しばしば綜体的な芸術意欲と小政治意欲を混同しがちであった。この二つのバランスをとることは、画壇の現実しては、はなはだ困難なのである。多くの場合、芸術的な綜合意志に到達しえない結果に陥っているからである。」今回はここまでにします。