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演劇「マイクロバスと安定」雑感
私の高校の同級生に俳優の竹中直人君がいます。彼を主役にした演劇「マイクロバスと安定」が東京下北沢の本多劇場で公演中なので、今日それを観てきました。劇場の受付前で、同じ同級生にも会って、昔の話題で盛り上がりました。その彼と竹中君と私は今も続いている同級生仲間で、昨年開催された同窓会でも親交を深めました。今日の「マイクロバスと安定」は竹中君と生瀬勝久氏による企画で、今回は第四弾となる作品でした。ベテラン俳優2人に5人の若手俳優が絡む緊張感溢れる芝居は、本当に見応えがありました。作・演出は倉持裕氏で図録には「世界に終わりをもたらす要因がー小惑星の衝突だとか宇宙人の襲来だとかーたとえどんなに現実離れをしていようとも、そこには必ず『死に直面した人間の振る舞い』という、誰もが将来必ず経験することが描かれています。」(倉持裕著)とありました。その通り本作では、世界が残り僅かで破滅するかもしれない中で、日常を過ごす人々の心理劇になっていました。舞台は演出家の自宅兼稽古場で、演出家(竹中直人)、演出助手(井岡晴太)、出演女優(サリngROCK)、演出家の旧友で嘗ての劇団仲間(生瀬勝久)、その娘で役者志望(飯豊まりえ)、隣人男女(松浦りょう・浜野謙太)の7人が平時を過ごしながら、そこで織りなす人間同士の関係性が中心に描かれ、その端々に世界が終末へ突き進む微妙な台詞が導入されていました。役者はその役になり切るのが才能と思いますが、本作では創作された架空の人物たちが、本当に課題を抱え、右往左往しているように感じられました。7人にそれぞれキャラクターの違いがあり、その個性や癖を全面に出し、また沈黙で覆いながらちょっとした間合いを取る、それは7人が徹底して脚本を読み込んで、己の人格の中に架空の他者を血肉化している証拠に他なりません。本作には豪華な演出もなく、また遊戯性もありませんが、演劇本来の面白味が詰まっていると感じました。演劇の空間とは何か、実は若い頃から私が考えてきたもののひとつで、今日の演劇を観て、私は若い頃に夢中になった演劇の空間にもう一度思いを馳せていました。竹中直人君、今日は有難う。そしてたまには自分を労ってください。