2013.05.28
彫刻を学んでいた頃、自分は版画に興味を持ちました。ドイツ表現主義の影響で、キルヒナーやバルラッハ等が作った木版画の強烈なイメージが頭から離れなかったのです。それは日本古来の錦絵とはまるで異なる世界でした。錦絵は絵師、彫師、刷り師という分業で作られる江戸時代の産業ですが、初期には芸術性の高さを誇り、西欧に多大な影響を及ぼしています。自分が惹かれたのは錦絵ではなく、自ら版下となる絵を描き、自ら版を彫り、自ら摺る創作版画でした。創作版画運動が明治時代に興り、その変遷を知る契機となった山本鼎の「漁夫」を雑誌で見て、自分も創作木版画を始めました。恩地幸四郎や田中恭吉もその時に知りました。今読んでいる「田中恭吉 ひそめるもの」(和歌山県立近代美術館企画・監修 玲風書房)を手にして、そんな20代の頃の思いが甦りました。版画は今でも興味があって、数年して時間が出来たら再び試みようかなぁと思います。その時は銅版画をやってみたいと思っています。