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映画「ウィッチ」雑感
昨夜、常連になっている横浜のミニシアターに米英合作の映画「ウィッチ」を観にいきました。これは魔女に纏わる伝説や伝承を基に、1630年代に遡った時代を描いていて、場所は米国ニューイングランドに設定しています。敬虔な清教徒である一家が人里離れて暮らし、信仰心だけを頼りに生活を営む様子は、観ている私を始源的で魔訶不思議な世界に導いてくれました。それは時代考証に基づいた現実感溢れる生活環境を描いていて、その中でも周囲の大自然が持つ潜在的恐怖を感じさせてくれました。森に彷徨う姉弟に忍び寄る得体のしれない何か、幼い子らが口ずさむ謎のような童謡、夜の蝋燭や暖炉の炎、悪霊が登場するわけではないのに、ひしひしと伝わってくる生活の中に存在する恐怖は、映画全体の演出とも相俟っているようにも思えます。まず色彩がグレートーンで美しいと感じました。音響が不協和音に効果を持たせ、観客を中世の闇の世界に誘っていました。悪魔憑きを表現する子どもたちにも感心しました。とりわけ長女トマシンは宗教に溺れない強さを持っていて圧倒的な存在感がありました。演じたテイラー=ジョイの美しさにも魅了されました。映画を観終わった後、やはり私が理解できないのはキリスト教の宗教観でした。神との契約、それに対峙する魔女の図式がしっくりこないのは、私の成育歴で培われた感覚であろうと思います。家族の絆を、特定宗教を中心に据えて守り抜こうとした一家が、自然の畏怖を前にして、その心理反映を憑依という圧迫によって、次第に崩壊していってしまう、その過程を描いた映画なのかなぁ、私が下したこの映画の解釈ですが、いかがでしょうか。