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映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」雑感
先日、常連になっている横浜のミニシアターに家内と「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」を観に行きました。建築をテーマにしている映画は、確か2015年に「創造と神秘のサクラダ・ファミリア」を観に行った以来です。元々建築家の生き方を取り上げている映画が少ないこともあって、これは極めて珍しい映画とも言えます。建築家ル・コルビュジエの作品は世界文化遺産に登録されていて、日本の東京国立西洋美術館もそのひとつです。映画は家具デザイナーとして活躍したアイリーン・グレイの肘掛け椅子が最高額で落札されたシーンから始まりました。そのシンプルなデザインに衝撃を受けたル・コルビュジエ。アイリーンの恋人になるバドヴィッチとの関係を保ちながら、アイリーンとバドヴィッチが設計した海辺の家を見てル・コルビュジエは彼女に対し、称賛から嫉妬に変わっていくのでした。海辺の家「E.1027」を巡って、アイリーンとバドヴィッチ、ル・コルビュジエの交流が微妙な影を落としていく中で、「住宅とは住むための機械である」と主張するル・コルビュジエと「機械ではなく人を包み込む殻だ」と返答したアイリーンとの憎悪入り混じる関係性が随所に描き出されていました。「E.1027」に無断で壁画を描いてしまうル・コルビュジエにも驚かされました。ル・コルビュジエは建築に機能的なシンプルさを求めたのではなかったのか、壁画は建物を保存するためにやったことなのか、アイリーンの才能に対する嫌がらせだったのか、私にはよく分からないシーンでした。芸術的な感覚の鬩ぎ合い、枠に囚われない生活ぶりなどを洒落た雰囲気で包み込んだ映画というのが、最終的な私の感想です。私の感覚に合わないのではないかと揶揄した家内に対して、日ごろ芸術に触れていれば、共感できる部分も多かった映画とも感じられたので、私個人としては十分楽しめたのでした。