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映画「ロープ 戦場の生命線」雑感
先日、常連になっている横浜のミニシアターに映画「ロープ 戦場の生命線」を家内と観に行きました。これは戦争を扱った映画ですが、1995年という現代に生きているNGO国際援助活動家の物語で、内戦や紛争が絶えない地域で、彼らが命の危険に晒されながらも、社会的不条理や矛盾と闘っている状況を描き出していました。単一民族が大半を占める日本にいると理解しがたい状況ですが、若い頃に数年欧州にいた自分は、バルカン半島が抱える民族問題に僅かばかり触れたことがありました。物語は、村の井戸に死体が投げ込まれ、水の汚染を防ぐため、彼らが死体を引き揚げるところから始まります。ロープが切れて、替えのロープを探し回ることで物語が展開していきます。地雷の恐怖、闇の商売などNGOを取り巻く状況は、決して予断を許すものではなく、国連のPKO部隊の管理下にありながらも、武装解除が徹底できていない緊張状態に、彼らは喘いでいるのでした。そんな中でも彼らは冗談を飛ばし合い、役人の命令に縛られない自由で濃密な人間関係が描かれていました。映画の舞台は村落破壊が齎す、埃に塗れた世界があって、そのリアルな場所に私たちを運び込んでくれます。撮影隊はどのようにしてこんな環境をカメラに収められたのでしょうか。アラノア監督は過去に紛争地域で援助活動家と一緒に仕事をしていて、各地でドキュメンタリーを撮影していたことがあったようです。映画の撮影は、容易に足を踏み込めない山間部で行っていて、スタッフやキャストは肉体的にも過酷な条件で仕事をしていたとパンフレットにありました。主人公を演じたベルチオ・デル・トロが秀逸で、何気ない仕草に存在感がありました。現在も紛争が続く地域があり、映画であったエピソードが語る現状が至る所にあって、今も改善されないままなのではないかと察してしまいます。