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映画「カメラを止めるな」雑感
2日にわたって映画の感想をNOTE(ブログ)に載せさせていただきます。私が常連客になっている横浜のミニシアターは遅い時間帯に上映する映画があって、勤務終了後に立ち寄ることが出来るのです。この時間帯であれば家内を誘うことも可能なので、感想を話し合うのも楽しいひと時です。今回観た映画は低予算で制作された無名の新人監督、無名の役者たちによる話題作でした。観客動員数が話題に上るほど評判になっている映画なので、この人気ぶりは一体何なのか確かめてみたくなりました。「カメラを止めるな」はゾンビが登場するホラー映画の部類に入りますが、まだどこにもないエンターティメント映画であると実感しました。まず度肝を抜かれたのは37分に及ぶロングワンカット。カメラに血しぶきがかかったり、地べたを這い回ったり、ともかく役者もスタッフも体当たりで臨んだ制作の現場であっただろうと思いました。映画の骨子を語るとメタバレになってしまうので、言い方が難しいのですが、綿密に考え抜かれた企画、何度も練習したであろう現地でのリハーサル、動線の確保やらメイクの準備など、常軌を逸したテイクを撮るためにトラブル続きだったのではないかと察するところです。ロケ地は茨城県水戸市にある芦山浄水場という廃墟で、これが撮影にぴったりの場所だと思いました。浄水場内とその周辺しか撮らないため、役者もスタッフもここに缶詰め状態でロケをやっていたわけで、おまけに最後に登場する大人の組み体操は傑作でした。こんなことに大真面目に取り組まなければならない運命に思わず笑いが噴出してしまいました。撮影の裏側で展開されるスタッフたちのドタバタは、無我夢中だからこそ滑稽で笑いを誘うのでしょうか。映画は私がやっている彫刻制作や家内がやっている胡弓演奏と同じ創造行為です。直接衣食住に関わることがない芸術文化に属するものです。そういうものにどうして制作者たちは肉体や精神の限界まで挑むことができるのでしょうか。戯事と言えばそれまでですが、そうしたものに人を夢中にする魔力があると私は感じています。映画「カメラを止めるな」に多くの人が魅了される理由がわかりました。理屈抜きで面白い、破天荒な娯楽性というのはこういう映画を言うのでしょうか。