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「モディリアーニ」第6章のまとめ
「モディリアーニ 夢を守りつづけたボヘミアン」(ジューン・ローズ著 宮下規久朗・橋本啓子訳 西村書店)の第6章「窮乏生活の中で」をまとめます。まず冒頭の文章を引用いたします。「モディリアーニがそれまでに会った女たちの中で、ベアトリスほど彼が生活をともにした女性はいなかった。そして、彼女と過ごした年月の間に、彼の作品は劇的な変化を遂げたのである。1915年にはすでに、現在のどの美術書にも掲載されているような肖像画に着手し、彼の画商であったポール・ギヨームや、画家モイーズ・キスリング、太った子供、新郎、新婦らの肖像画を手掛けていた。彫刻家として過ごした年月の間に、モディリアーニは人間の姿を三次元的な固体として捉える術を身につけ、彼の肖像画はすでに、柱のような長い首と楕円形あるいは細長く引き伸ばされた形の顔、顔の表面に切りこまれたような鋭角的な鼻を備えるものとなっていた。」ところで二人の関係はどうだったのか、こんな一文もありました。「モディリアーニの擁護者となることを決意したベアトリスの自我と、彼女の僭越さに腹を立てたモディリアーニの自我がぶつかりあったのである。しかし、ベアトリスはたとえ彼を恋人として見なすことができなくなっても、彼の芸術を称揚することはやめようとしなかったであろう。」さらにベアトリスが綴った美しい文章が残されています。「愛は…性的な関係とは無関係である。愛は、個人が高揚の極みに達した状態であり、すばらしく、まれな、そして人を奮い立たせるような力強い夢がもたらす偉大で、まれな産物である。」これはモディリアーニのことが念頭にあったようですが、当人は窮乏生活の中にいました。「画廊にとってモディリアーニは扱いにくい作家だった。モディリアーニの作品を買いたい客が現れた場合、画廊の方で値段を提示したとしても、客がモディリアーニの住所を聞いて直接彼に会いにいけば、それよりもっと安い値で売ってしまうのだ。ましてや、抜け目のない客ならば、酒や食事をおごって、その礼としてモディリアーニからただで作品をもらうこともしばしばだった。~略~彼は貧乏のどん底にありながらも、プライドだけは高かった。画材を買うためや酒を飲むために金を借りることはあっても、独特の尊厳さを失うことはなかった。」