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「藤森照信建築」を読み始める
先日まで読んでいた「建築とは何か 藤森照信の言葉」(藤森照信他著者多数 エクスナレッジ)に続いて、「藤森照信建築」( 藤森照信著 増田彰久写真 TOTO出版)を読み始めました。この書籍は分厚く持ち歩きが困難なため、職場の私の部屋に置いています。ほとんどの頁が大判の写真のため、目で楽しみつつそれぞれのユニークな建築に纏わる文章を読んでいきたいと思います。書籍の冒頭に「人類の建築をめざして」という文章がありました。その中で注目した箇所を引用いたします。「最初に注目したのは生命現象だった。アール・ヌーヴォーの動植物の層である。そうした生命現象の層の下にはアール・デコに代表されるような鉱物の層があった。鉱物の層の下には数学の層が隠れていた。鉱物の結晶の形を決めるのは数学。」この例えの面白さに感覚を擽られました。「20世紀建築を考えるとき、くれぐれも忘れないでほしいが、20世紀建築の本質はどの国どの地域のものでもない。むろん、ヨーロッパのものでもない。生れた場所が、20世紀刊の地図にはヨーロッパと書かれていただけ。本当に、インターナショナルなのである。」その後の文章に著者が建築をやるようになった動機が書かれていました。「生まれ育った田舎の、諏訪大社上社の筆頭神官守矢家の史料を収蔵展示する小さな博物館を建てたいというのである。~略~私は、守矢家のすぐ隣に生まれ、先代当主に名前を付けてもらい、現当主とは幼なじみ。子供の時から先代が、鹿の頭や、生きたカエルを矢で刺して、神様に献ずるのを見てきたし、出雲から進入した勢力を、天竜川の河口で迎え撃ち、敗れた時の戦のようすや、敗れて神の座を出雲勢にゆずり、筆頭神官となり、稲作を教えられたことなどを親から聞いて育った。」著者はそんな契機から建築家への道を歩み始めたようです。「モダニズム建築には、構造体を表現として見せる、という鉄則がある。ル・コルビュジエの打放しコンクリートやミースの鉄骨はその好例なのだが、この鉄則を犯すことになる。鉄やコンクリートをムキ出せば精神的犯罪、隠せば建築的犯罪。結局、腹をくくり、構造体を自然素材で包んで隠し、建築的犯罪を犯すことにした。やるからには完全犯罪に仕立てないといけない。バレたり、なんかヘンダナと感じさせても失敗。」というわけで「神長官守矢史料館」が完成しました。私はまだ実際の建物を見ていませんが、懐かしい感じのする素材感に溢れた建築かなぁと写真を見て思っています。無国籍の民家と原廣司氏に評された建築ですが、ユニークなのに風景に溶け込んだ建築だろうと思います。