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映画「時代革命」雑感
昨日、横浜にあるミニシアターに香港の映画監督が作ったドキュメンタリー映画「時代革命」を観に行きました。本作は香港であった大規模デモを命懸けで記録したもので、撮影現場になった香港ではこの映画の上映はできません。図録から内容の概略を引用します。「2019年、香港で民主化を求める大規模デモが起きた。10代の少年、若者たち、飛び交う催涙弾、ゴム弾、火炎瓶…この最前線を中心に、壮絶な運動の約180日間を多面的に描いたのが本作だ。カンヌ国際映画祭などでサプライズ上映され、国際社会に深いインパクトを与えた衝撃作が、日本で公開される。自由に明日はあるのか。デモの発端は、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案が立法会に提出されたことだった。運動が盛り上がってゆく2019年6月ごろからの動きを追う。参加者たちは『逃亡犯条例改正案の完全撤回』『普通選挙の導入』などを五大要求として掲げ、6月16日には、香港の人口の約3割を占める約200万人(主催者発表)に膨れ上がった。男子学生が力説する。『僕らは(時代に)選ばれたのではない。僕らが選んだ』」というのがデモに至った概略でした。映画を観ていくうちに、デモの中身が「和理非(平和・理性・非暴力)派」と「勇武(武闘)派」があることが分かりましたが、それらが「水になれ」という概念で臨機応変の活動をしていました。デモに中心となる組織がなく、それぞれが主体的に参加している様子が映し出されていました。ドローンによる提供映像もあって、200万人という規模がどれほどのものか、私自身の目に焼きつきました。題名になった「時代革命」とはデモ隊の旗「光復香港 時代革命」から採ったものです。デモを取り締まる警察は、デモ隊に向って発砲も厭わず、とりわけ大学構内での学生と警察との鬩ぎ合いは、閉塞感が漂いつつ、その熾烈な戦いは圧倒的でした。これは民主主義を守るための抗戦であることは、映画を観ている観客全員が知っていて、その後の香港の中国本土に従わざるを得なかった状況も、私たちは知っているわけです。私もこれは現実的な歴史の一幕で、ドラマのような筋立てはないことは承知していました。翻って私たちの日本ではこれは対岸の火事なのか、自由な生活を守るために人はどのような方法や手段に訴えるのか、本作を観ると民主主義がどんなに貴重なものか、平和ボケしている私でもよく分かりました。世界情勢が不安定な今こそ、もう一度本作で主張されていたことを心に刻みたいと思います。