Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「世界の美しい民藝」について
先日、東京駒場にある日本民藝館で開催されている「聖像・仏像・彫像」展に行って、ミュージアムショップに立ち寄り、同展の図録を求めました。図録はポストカードの入った簡易なものではありましたが、これと同時に「世界の美しい民藝」(巧藝舎)を見つけました。私は世界の民藝品が大好きで、海外で生活していた頃もそうでしたが、日本にある民藝店でも気に入ったものがあれば購入していました。ルーマニアでは村に残されたイコンのガラス絵を、村人に頂いたこともありました。民藝品の中でも私がとりわけ美しいと感じていたものはアフリカの仮面でした。日本で売られているものはなかなか高価で、手が出ないものもありましたが、新旧取り交ぜてさまざまな仮面を私は入手してきました。ピカソやモディリアーニ、クレーなど、ヨーロッパの近代美術の芸術家が創作活動をする上で刺激としたアフリカの仮面や立像は、精霊や神、祖霊という目に見えないものが表現されていることに、彼らが惹かれていたことがあるのは事実です。それは「プリミティブアート(原始美術)」と呼ばれて、ヨーロッパの美術館や博物館に展示されていたのです。その朴訥な造形がとりわけ私には現代的に見えたのは、彼ら近代美術の芸術家のおかげかもしれません。本書からアフリカの仮面等についての説明を拾います。「それぞれの部族は独自の神話を持ち、祭祀では神話の場面で踊りを再現し、神話の中の人物や動物、精霊、祖霊がマスクとなって登場する。そのマスクの造形には民族固有の美意識や精神をもとに、美しいとされる顔、、髪型、化粧、動物の動きなどの特徴がデフォルメされ、民族の様式に沿って1本の木からくり抜きでつくられる。大きなものは2mを超えるものもある。一方立像は祠に置かれる祈禱用のものや祖先像、王宮などの飾り、玩具などに使われる。マスクは共同体の儀式など、公的な場面に使われるが、立像は私的にも使われることが多く、公の目に触れることはない。立像も精霊や祖霊をかたどったものであり、マスクと同様大胆にデフォルメされる。」アフリカの仮面や立像は、ざっくりと丸彫りされ、そこに魂を吹き込まれているように私は感じます。彼らが生活している部落の周囲には密林が広がり、密林の暗闇の中には動物だけでなく、人を超えた何かが潜んでいて、時にそれらに守られ、時に災いを齎されると人々が信じていたと私は考えます。そうした超自然的なパワーが芸術家を刺激してやまないのだろうと思っています。