Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「騎士団長礼賛」について
「カラヴァッジョ」(宮下規久朗著 名古屋大学出版会)の「第9章 犠牲の血 」の「4 騎士団長礼賛」の気になった箇所を取り上げます。本単元でも前から継続して「洗礼者ヨハネの斬首」を扱っていて、現在オラトリオに設置されている作品に関する状況の追加説明をしています。「(カラヴァッジョの作品は)騎士団長ヴィニャクールが島に来る以前に起こった大包囲だけでなく、彼の治世に起こった事件を反映し、その輝かしい戦績を称える意味をも担っていたと思われるのである。とはいえ、《騎士団虐殺図》がカラヴァッジョ作品のすぐ上の設置されていたという事実は、カラヴァッジョ作品もまた、元来、騎士の殉教を称え、その鎮魂という意を担っていたことと無縁ではないのであろう。」騎士団長ヴィニャクールはカラヴァッジョをどう見ていたのか、そこに触れた文章がありました。「カラヴァッジョがマルタ島に来た理由はさだかではないが、まずヴィニャクールの肖像を描くという仕事を受けたことから、騎士団長が招いた可能性も強い。しかも近年アッツォパルディやマチョーチェらによって発見された史料があきらかにしたように、ヴィニャクールはカラヴァッジョがローマで殺人を犯したことを知っており、騎士団の規則を曲げてまで画家を騎士にしようと苦心しているのである。~略~洗礼者ヨハネの斬首という図像伝統の大枠に従いながら、犠牲を暗示する処刑の特殊な様態やいくつかの特殊なモチーフによって、騎士団にまつわる現実的な意味が付加されていたと思われるのである。つまりこの作品は、制作当初において、騎士の戦死、洗礼者ヨハネの殉教、キリストの犠牲という重層的な意味をもっており、対イスラム戦の英雄的な活動を主導した騎士団長ヴィニャクールへの称賛と、戦死した騎士たちへの鎮魂を込めたものであるというものである。」今回はここまでにします。