2025.08.05
「芸術家列伝2」(ジョルジョ・ヴァザーリ著 平川祐弘・小谷年司訳)の「ラファエㇽロ」について、2つに分けて気に留まった箇所をピックアップいたします。「普通ならば、長い時間にわたって、天が多くの人々にわかち授けるであろう世にも稀な才能やもろもろのの美質や限りない宝の数々を、天は時に一人の人間に存分に惜しみなく授けることがある。その実例がはっきり見られるのが、ウルビーノ生まれのラファエㇽロ・サンツィオという優美にして秀れた人の場合である。」有名な「鶸の聖母」に関するところを拾います。「幼子キリストは聖母の脚の間におり、小さな聖ヨハネは幼子キリストに小鳥を一羽いそいそと差し出している。二人はそれをたいへん喜んでいる。各人の態度にはそれぞれあどけない単純さと愛らしさとがあり、しかも絵は実に見事に彩られ、入念に制作されているので、人物は、描いたり塗られたりしたというより、本物の肉体からなるように思われた。聖母もまたいかにも神々しく優雅な恩情をたたえており、さらに前景も、風景も、その他の部分も、非常に美しい作品である。」次にミケランジェロと関わりがあるところを拾います。「ラファエㇽロは当時ローマで非常な名声を博した。しかし周囲から非常に美しいともてはやされたおだやかな画風や様式を確立し、ローマ市中の数多くの古代の遺跡や作品を見て絶えず研究したにもかかわらず、当時の彼の作中人物には、その後彼が描き得たような、ある種の偉大さと荘厳さはまだ備わっていなかった。ところでその頃、ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂で法王と衝突して法王を狼狽させるという事件がもちあがり、そのためミケランジェロはフィレンツェに逃げることを余儀なくされた。それでブラマンテはシスティーナ礼拝堂の鍵を預かっていたので、友人であるラファエㇽロに、礼拝堂を見せ、ラファエㇽロがミケランジェロのやり方を了解できるよう、便宜を計ってやった。このミケランジェロの作品を見たのが機縁になり、ローマのサン・アゴスティーノ寺で、アンドレーア・サンソヴィーノが描いた聖アンナの上に、すでに一度は描き上げられていたにもかかわらず、預言者イザヤを今日見られるような姿で、ただちに新たに描き直したのである。その作中でラファエㇽロは、ミケランジェロの作品を見たことを参考にして、大いに自己の様式を改良・拡大し、自らの作品に威厳を与えた。それで、その後ミケランジェロがラファエㇽロのこの作品を見た時に、さてはブラマンテがラファエㇽロに便宜を計り、彼に名を成させるために、自分の裏をかいたな、と思ったという話だが、それは確かに事実その通りなのであった。」今回はここまでにします。